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赤也とアドレスを交換した。朝のSHRが終わった一時間目前の休み時間には最初のメールが届いて。
その“らしい”メールの内容に何だか心がほっと温かくなるような感じがした。
2時間目は移動教室でその帰り、3時間目は担任の授業だ。
あの人の授業はもうサボりたくない。保健室と言って保健室に行かなかったあの日。
わざわざ確認まで取りに行ってくれた様でその事実がバレ、次の彼の授業では指名されっぱなしだった。
解けない問題ではないんだけれど、アレだけ連続で指名するのはもう、虐めの分類に入ると思うのは私だけだろうか。
亜美も苦笑いで時々助けてはくれたから、よかったのだけれど。兎に角、そんなことがあったのだからこそ、遅れることもしたくない。
『っ!?』
その一身で足を動かしていると、横から急に出てきた手には反応しきれず、その手に腕を掴まれて一気に引っ張られた。
勿論予想していないことでその力に気づいてから反対方向に力を向けたが、どうも相手は男で勝てるはずも無く空き教室に引っ張り込まれた。
半ば転がり込むようにその教室に入り、力に身体を支えきれず、転ぶと思った途端何かに支えられた。
その瞬間に香った匂いはいつかと同じで、そんなに近づいたことがある人なんて私にはひとりしかいない。
『な、なんで…』
「よう、久しぶりじゃのう?」
はっと顔を上げた先には変わらず銀色の髪が太陽に反射して、その人は笑っていた。
顔は、笑っていた。その雰囲気はどこか怒っていて何かに責められているようで…慌てて彼の体から距離をとる。
その瞬間にピクッと彼の眉が寄った気がしたが、次の瞬間には変わらない余裕の笑みで私を見下ろしていた。
『に、おう…くん…、久しぶりって、殆ど毎日メールしてるじゃん…』
「メールはのう。実際に会ったのは久々じゃろ。いや、2.3日前に目は合ったか?」
『!』
明らかに合同体育の時の事を言っているのが判った。
彼と会ったのはあの日が最後だ。廊下を歩いているのとかは時々見かけるけれど、擦れ違うことも無く、あの日だけ。
そして彼が怒っていることも、なんとなく気がつけたような気がした。
『え、っと…合同体育の時、のこと…だよね。いや、ですよね…?』
「ほう?お前さん気づいとったんかァ?知らんかったと思ってたんじゃが…」
『…(嗚呼、やっぱり。)』
彼が怒っているのはあの日、彼が手を振ったことに対して無視をしたからだ。
仁王は遠まわし遠まわしで私に無視した事を言わせようとしているのが判った。
だから、私は…そっと目を仁王から逸らして斜め下を見つめる。
『…ごめんなさい…。』
「…何のことじゃ。」
『手、振ってくれたやつ…無視したこと、怒ってるんでしょ…?だから…ごm…』
「目を見んしゃい、あやか。」
『いや…、ちょっと…』
「人に謝るときは目を見て、じゃろ!」
『は、はい!』
そうそう大きな声など出さない(という私のイメージ)仁王に気圧されて、勢いよく顔を上げると目の前に顔。
すごく近いと言うわけではない、でも普通よりは少なからず近いその瞳に思わず息を呑んだ。
彼の瞳は、憤りと哀しみで揺れているように見えてしまったから。
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