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不満そうに眉を寄せたり、心配そうに眉を下げたり、拗ねたように唇を尖らせてみたり、赤也の表情はころころと変わる。
なにより嬉しそうに笑ったり、にこにこと笑いかけてくる赤也は、凄く暖かくて太陽みたいだと思う。
真っ直ぐ、ストレートに言葉にする赤也だから。
さらっと言った恥ずかしい言葉も、即答に返してくれた言葉も、不安に揺れる私を笑顔にさせてくれる。
ありがとう、はその全てに向けてだけど、恥ずかしいから誤魔化すようにはぐらかした。
罰が終わったという赤也と共に歩き、コートが見えてくると足を止め、赤也もつられるように足を止めた。
そして、私は一度目を閉じてから赤也に向き直って真剣に見つめた。
『赤也。お願い、聞いてくれる?』
「おねがい、ッスか?いーッスけど…何スか、お願いって。」
『…仁王雅治を呼んでほしいんだ。』
私が、1つ区切りをつけるために。
返ってこない返事に赤也を見ると、哀しそうな表情に不満が混じったような顔に思わずぎょっとする。
しゅんっ、と耳と尻尾が垂れたようなその表情に、同じように眉を下げて赤也の顔を覗き込む。
「…なんで?…仁王先輩の事、その…好き、なんスか…?」
『!す、すきとか違うよ!…そうじゃなくて、言わなきゃいけない事があるんだ。』
「言わなきゃいけないこと…?」
『うん。でも、告白じゃないから。絶対それは違うから!だから、そんな顔しないで。』
どうしていいか判らずに、とりあえず否定をしながら赤也の頭を撫でた。
すると一瞬目を見開いた後、途端に目を細め嬉しそうに笑うと元気に返事を返してくれる。
その様子は耳をピンと立て、尻尾を元気に左右に振って喜ぶ犬に見えてしょうがない。
機嫌が直ったようで、「じゃ、呼んでくるッス!」と言うとそのまま走ってコートへ入っていく。
それを見届けてから、昨日見つけた林の中に入ってコートを見れば、赤也は真っ直ぐに仁王くんの元に向かい、何回か言葉を交わす。
そして、仁王くんが頷くような動作をした後、コートを出てこっちに歩いてくるのが見えた。
『…おはよう、仁王くん。』
「おはよーさん。…話、あるんじゃて?」
『うん。…聞いてくれる?』
「…プリッ。」
目の前に来て、微笑んでから少しだけ真剣に仁王くんを見た。
短くなった髪に少し驚いたようだけど、それが判ったように、口にしない。
そして、少しおどけた様に返事をしながらも、仁王くんはコクンと頷いた。
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