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『答え、判った。避けていたこと、逃げていたこと…、…嫌おうとしていたことも。その、理由(こたえ)。』
「ほーか。」
視線を落として、眉を下げながら話を始める。
理由(こたえ)を知りたいはずなのに、まるで興味がないように言葉を返す仁王くん。
それに一層眉を下げて、一度目をつぶってから彼の瞳を見つめた。
『でも、やっぱり答えられない。』
「!」
『自分勝手で卑怯と思われることだけど、言えないんだ。』
これでもかと眉を下げて、困ったように彼を見ることしか出来ない。
どんな視線で、どんな目で、どんな言葉を言われようとその瞳から逸らさないことしかできない。
(キャラで、見ていた、から…なんて、言えない。言ってはいけない…。)
それはまるで、彼らが“生きて”いることを否定していることだから。
それだけは、言えなかった。
どんな事を言われようと罵られようと見つめ続けると覚悟を決めた瞳に映ったのは、優しく微笑んで見せた仁王くんだった。
『なん、で…。』
「あやかが答えを見つけたんは態度が変わったことで判るぜよ。目を見てくれる、笑いかけてくれる、ただそれだけで充分じゃ。」
『っ…、ばか…。』
仁王くんは、まるで私が言わない事が判っていたように言ってみせた。
(…どうして、誰も彼も…、優し過ぎだ。)
何時だって何枚も上をいく仁王くんには、敵わない。
その顔をからかう様に仁王くんがニヤリと笑って見せたが、雫を零さないように耐えるのに一杯一杯で。
『…図々しいのは、百も承知で言っても、いい?』
「言ってみんしゃい。」
『…と、もだちに、なってくれます、か…。』
呟くように零した言葉は届いたかも怪しいくらいに、擦れて空気に溶けた。
逸らす事のないまま見た彼の瞳は、丸くなったと思えば一瞬優しく微笑んで見せ、直ぐに意地悪な表情に変わる。
それでもその笑顔に、涙が頬を滑って伝った。
「俺の友達は高いぜよ?一生からかわれ続けると思いんしゃい、覚悟は良いかの?」
『…っ、におく…。』
「良いに決まっとる。…泣き虫じゃな、お前さんは。その髪型もよう似合っとるよ、あやか。」
上がった彼の手は、私の頬の涙を拭って短くなった髪を一度梳くと頭に乗せられた。
そして昨日と同じように、ぐしゃぐしゃとかき回す様に撫でられた。
その重みと暖かさに涙を流しながらも、私は笑って見せた。
(友達、)
(その響きは)
(新しいはじまり。)