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□世界はそして変わる
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『離してっ、早く行かなきゃ…!』
「少し落ち着け。」
「…星詠みか、何を見たんだよ。どっちにしても未来だ、時間はあるだろ。」
『ないよ!もう放課後だから、きっともう時間は殆ど無い。あのこが、赤也が危ない!』
若干叫ぶように声を張りながら、捕まれた腕を半ば振り払うように腕を振るとふたりは驚いたあと悲しそうな顔をした。
その表情に思わず声が漏れ、気まずくなって肩を落とし目線を下に落とした。
「…そいつって確かお前の中学の後輩だったな。」
『唯一、私を、ずっと信じてくれた…大事な、とっても大切な後輩、です…。』
「…だが、学園から出ようとしていたのか。今の外はあやか達にとっては危険だと言ったはずだ。」
『……それでも、行く。…赤也も、同じかもしれない。』
「おなじ…?っ、待て!」
先生が何を言っているかは判っている、判っているつもりだ。
それでも、私は赤也を放っておくことも他人に任せることもできない。
(それに、赤也は……っ!)
ドアを乱暴に開け飛び出すと、後ろからふたりの声が聞こえて、振り返る。
「あやか!ひとりで行くな!俺もっ…」
『来ては駄目、先輩は特に駄目。これはこの学園に人には関係ない、巻き込めない。それに、ひとりじゃないから。』
ドアに手をかけて駆けて来ようとした一樹先輩を、拒絶で止める。
先輩は顔を上げて苦しそうな顔で私を見て、琥太郎先生は私をじっと見つめていた。
ふたりを安心させようと、離れずに着いてきていた焔を抱きかかえると、精一杯の笑顔でふたりを見る。
『いってきます…!いくよ、焔。』
「っ、あやか!!」
「俺は、また…護れないかもしれない…。」
「先生…?」
廊下を駆け出した私には、私を呼ぶ一樹先輩の声は聞こえても、酷く泣きそうな顔をした琥太郎先生が呟いた言葉は聞こえなかった。
玄関に向かって走っていると、この学園でよくしてくれたみんなとすれ違う。
「薔薇姫ちゃん?」白銀先輩
「!あやかちゃん?」金久保先輩
「お、水瀬!」陽日先生
「そんなに急いでは危ないですよ!」青空くん
「む…、廊下は走るな!」宮地くん
みんなの横をすり抜けるように走り抜け、目の前には、もうひとりの女子生徒。
「あやかちゃんっ、?どうしたの?」
『つき、こ、ちゃん…』
「お前、息あがってんじゃねーか。」
「どこから走ってきたの、お茶でも飲む?」
『…、ごめん。私、行かなきゃいけないから。』
止めかけた足を前に出す、目の前の幼馴染組は心配そうな顔をして私を見ている。
それをどうにか変えたくて、息を整えつつ、笑顔を浮かべて見せると、走り出す。
呼ばれる名前を振り切るように、昇降口まではもう少し。
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