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いつもと同じように特に変わったことを話すこともなく、世間話をしながら帰り道を歩く。
今日は赤也がいるからか、少しだけ会話が弾んでいるような感覚。
人が通らないことを良いことに横に広がっては話していると、ふと赤也が私の制服の裾をちょいちょいと引っ張った。
『ん?なに?』
「モック行きません?俺腹減っちゃったッス。」
「お、いいこと言うのう。俺も腹減りナリ。」
赤也の方を見ると、すぐ近くにモックの店がある。
それに仁王くんも乗っかって、ふたりは行きたそうに私を見ていた。
ジャッカル君を見ると、苦笑して頷いて、多分私が決めていいよということだろう。
『えと、でもお家にご飯作ってくれてるでしょ?それ食べなきゃいけないし駄目だよ。』
「へーきへーき、寧ろ外で多少食べて来いって言うくらいですもん!食費をかけんなってー。」
「ま、そーじゃな。」
『…そーいうもんなの?』
「あー、まあ。そうだな。自分の金で腹少し満たして来いみたいなのは俺たちにはあるあるだ。」
ジャッカル君を振り返ると、苦笑気味に頷くのでふたりが言っている事は本当なのだろう。
でも、お家にご飯があるのも事実。
きらきらと期待の目で見られ、眉を下げながら『わかった、いいよ。』と頷いた。
「やた!」「プリッ。」
『ただし、ご飯も食べるようにセットは1つまで。それでいいなら入ろうか。』
「ええ、でもわかったッス。入りましょ!!」
「しょーがないのう。」
『ちょ、赤也、急がなくても入るって。』
裾を持ったままモックの方行く赤也に引っ張られるように4人でモックのお店に入る。
瞬間にテンション高めに入った赤也にお客さん、というより女性の目が集まり、すぐに注目の的になる。
どうしてもその中に一人いる私に、嫉妬と羨望と色々な視線が注がれるのがわかった。
それにうっと思うが、目の前で嬉しそうにする赤也を見ていれば少しくらい我慢できる気がした。
「大丈夫か、水瀬…?」
『だいじょぶ…、心配してくれてありがと。』
「先輩ー!早く早く!選びましょ!」
「無理はしたら怒るぜよ。わかったからはしゃぎなさんな。」
心配そうに眉を下げて聞いてくれるジャッカル君に安心させるように笑顔で頷く。
仁王くんが後ろから頭に手を載せて優しい声でそう言ったかと思ったら、赤也の方へ歩いていった。
前では赤也がにこにこしながら何にしようか選んでいて、ジャッカルくんを一緒にそこに近づいた。
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