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「!あやか先輩?」
『うん…?赤也。』
「こんなところで何してるんスか?」
放課後、もう当番の日以外は毎日と言っていいほどに林の中に入っては絵を描き続けるのが習慣になっていた。
変わりなくそこで彼らを書く。
昨日の幸村さんの言葉は、私の胸の中にそっと残っている。
黙々と絵を描いていたから、ボールをとりにきた赤也に、声をかけられてから気づいた。
『え、あと…美術のデッサン的なものを、描いてたんだ。』
「俺たちを?…ぷ、やっぱ先輩変わってるッスね。写真じゃなくて絵とか。」
『わ、笑わないでよ。でも、気分害したらごめん。』
「まあ、写真撮られて売り買いされてんのは嫌だけど。そんなこと無いッスよ。あ、どーせなら一緒に帰りましょ!もう少しで部活終わるんで!」
『え、あーと…、』
「切原ー?ボール見つかったかあー?」
「あ、はい!ありましたー!んじゃ、約束ッスよ!メールしますからね!」
先輩に呼ばれたらしい赤也はそういうと、ボールを片手にコートに戻っていく。
声をかけられずに、その後姿を見送るだけになる。
(う、ジャッカルくんと仁王くんもいるんだけど…。先にメールしとけば大丈夫かな…)
その後なにも浮かばずに、取りあえず3人にメールを打ってスケッチブックに戻る。一抹の不安を抱えながら。
「で、何で切原までおるん?説明しよるじゃろ?」
「あやか先輩、ふたりと知り合いだったんスか!仲良いんスか!」
『…。今日は一人で帰ろうかな…。』
「俺も帰りたいぜ…。はあ、おいふたりとも落ち着けって、水瀬が困ってるだろ。」
案の定、ふたりが問い詰めるようにいた。
顔を歪ませてしまったのをジャッカル君に見られ、ふたりで苦笑を漏らした。
『一緒に帰ろうって言われたから了解しただけのことでしょ。ふたりとは同級生なんだし、知り合い、というか、友達だ、よ。はい、答えたでしょ、ほら帰るよ。』
「お?」
「あ、ちょっとあやか先輩っ!?」
『おいてくよー?ジャッカル君と先行くからね。』
「ピヨッ、俺を置いておこうとするとはいい度胸じゃの。」
ジャッカル君の制服の裾を、少し引っ張って校門に向かう。
結局、不満そうな顔をしたふたりも校門を出る頃には駆け寄ってきて、一緒に学校を出た。
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