□つまりはそういうこと。
1ページ/3ページ







本日、9月25日。2年廊下。



時間は放課後で、普通に鞄を取りに教室に戻ろうと歩いていたところに、後ろから急な衝撃を食らう。

思わず声が漏れるが、以前ほどは驚かなくなったのはもう、慣れの所為だろう。




『赤也…、だから廊下ではやめてって…』

「あやか先輩!せ、先輩は今日は何の日か、知ってます…か…?」




後ろから引っ付く赤也の顔は見えない。

少しだけ息をのんでから、『知ってるよ。』とちゃんと返す。

その言葉に、赤也は顔を上げると、腕を解いて私を覗き込むように見た。




「ほ、ほんとっすか!?」

『うん。赤也の誕生日、でしょう?』




その目を見てはっきりと言えば、喜ぶはずのところで赤也は少し泣きそうな顔をする。

その顔に彼の腕を引いて、空いている教室に入る。

私を見た赤也に、正面をさして座るように促す。




『で?なんでそんな浮かない顔してるの?そもそも部活が始まるんじゃない?』

「…っ。」




赤也はぐっと唇を噛み締めて下を向く。

それでも少しでも和らげようと微笑みながら待つと、赤也はゆっくりと話し始める。




「今日、先輩たちにもこの話したんす…でも、誰も覚えてなくて…。」

『うん。』

「なんか、すげー悔しくて、すげー寂しくて、すげー悲しくなって…。」




そこまで言って赤也は口を閉ざしてしまった。


(そうだよね、半年前は小学生だもんね。)


唯でさえ、他の先輩を振り払ってレギュラー入りした新人として彼ら以外の先輩からのあたりは激しいはずだ。

そのなかで自分のことを知らないと覚えてないと言われて、赤也は酷く不安になったんだろう。













次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ