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Bunta.M side




「丸井、ちょいと付きあいんしゃい。」

「は?ちょ、仁王?」




昼休み、ご飯を食い終わって菓子に手を出していると、腕を仁王が引っ張った。

理由も言うことなく、俺を立たせると腕から手を離して教室を出て行く。

しょうがなく、菓子をひとつ口に放り込むと、仁王の後を追って教室を出た。

廊下を見渡すと、既に仁王はずんずんと先を行っていて、少し早足気味に廊下を進む。




「おい、仁王。急にどこ行くんだよ。」

「…。」

「仁王!なんで何処に向かってるかくらい言えよぃ。」

「いいから、黙ってついてきんしゃい。」




追いついた仁王の背中に、質問を投げかけるが返事もなければ進むスピードも変わらず、変化なし。

少し声を上げて呼ぶと、仁王は振り返りもせずに、淡々とそう言い放った。

そうしている間に渡り廊下を進み、階段を上がっていく。

どうやら特別棟に向かっているらしい。

結局、聞いても答えてくれる気は無いので、しょうがなくガムを膨らませた。




「ここじゃ。」

「ここって…、美術室?は?お前美術なんて取ってたっけ。」




立ち止まった仁王の背中から覗き込むように教室を見れば、美術室の文字。

訳が判らないまま仁王にもう一度問うが、それさえもスルーして中に入っていく。

流石に少しイラッとしながらも、その後を追って続いて入る。

癖のある絵の具の匂いが身体に纏わりついて、眉をひそめつつ仁王の隣まで進む。

仁王は壁の前に立って、飾られている作品を見上げていた。

その視線を先を辿るように俺も壁を見上げた。




「……!」

「あやかの絵じゃ。」




ぱっと目に付いたのは、やっぱりテニスを基に描かれた作品だった。

仁王が返してきた言葉に、はっとしてもう一度その絵を見直す。

顔は影で隠れて描かれていない。一人の少年がボールを打つ瞬間のフォームを描いた作品。

その絵の下にはあの女の名前が描かれていた。




「このフォームって…。」

「…幸村じゃな。特徴掴んでて直ぐ判るぜよ。」

「でもよ、他が…。」

「よう見てみんしゃい。」




フォームは確かに幸村くんだ。

毎日見てるんだ、それが判らないわけが無い。ただラケットもシューズも違う。

だけど、仁王が言った言葉に絵を再度見つめなおす。


(…あれ…?)


違和感を感じて絵を見ると、幸村くんではない、でも確かに毎日見るものがあるのに気付く。

黒い帽子、は真田?じゃあ眼鏡は柳生で髪型は柳、シューズは仁王で、肌はジャッカル…それで、ラケットは…俺の使用してるやつ…?











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