ARIA 連作短編夢

□Navigation.8 マラカイト
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 カーテンの合間から漏れる日差しの眩しさで目を覚ました。
 何だか夢を見ていたような気がする。どんな夢だったっけと、純粋な好奇心が、脳を覚醒させる為に思いを巡らせる。

 赤かった気がする――何が?
 トマト? ポスト? 花の色? どれも違う気がする。
 そういえば、赤と言っても真っ赤じゃなかった。どちらかというと、オレンジに近いような――そうだ、赤かったのは、夕日だ。

 夕日で赤く染まった街に、男が立っていた。オレはその男に、いくつかの言葉を浴びせられていたのだ。
 何て言われていたのか、細かいことはよく思い出せない。けれどある単語が発されたことだけは覚えている。

 『もみ子』――すなわち灯里ちゃん。夢で見たその光景は、数ヶ月前に暁と浮き島で一悶着した時のそれと重なっていた。

 バツが悪くなり、寝癖の付いた髪をくしゃくしゃと掻き回す。どうしてこんな夢を見たか、その理由も何となく自覚できて、細く長く、溜め息を吐いた。


「ついに今日か……」



 
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