よろずジャンル

□嗚呼、虚ろ気な日々
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「マスター、風邪を引きますよ」

「んんー……」


 こたつに入ったまま、夢の世界へと舟を漕ぎだしているマスターの背中を揺する。
 私の努力も虚しく、マスターは返事だけで動く気配を見せない。瞼を閉じたまま不快そうに眉を寄せ、テーブルの上に投げ出した枕代わりの両腕の隙間に、額を押しつけている。

 完全に寝に入った様子のマスターを見て、仕様がない人、と肩を落とした。

 このマスターは、とにかくぼんやりすることが好きだ。本を読んでいるかと思えば一向にページが進んでいなかったり、テレビを見ていたから内容について話題を振ってみたら右から左に流れているだけだったらしく首を傾げられたり、食事の時でさえ、ふとした時に箸が止まって動かなくなることがある。

 現に今も、テレビをBGMに熱心にノートに何かしらメモしているかと思えば、少し目を離している内にテーブルに頭をぶつけていた。

 日常的にそんな姿を見ているので、この人、外では大丈夫なのだろうか? なんて失礼なことを考えてしまうこともあるのだが、どうやらオンオフはきっちり分けるタイプらしく、特別コミュニケーションに困っているような様子はない。帰って来て、愚痴を漏らす姿なんてものは未だに見たことがない。

 外でしっかりやっているなら、家でのこのだらけ具合も納得出来るのだけれどーー、


 
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