ARIA 夢小説
□知り合い以上、友達未満
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「ストォ――ップ!」
「は、はひっ」
「……いきなりどうしたんですか? 藍華先輩」
見慣れた人影に条件反射して声を上げる私に、オールを握っていた灯里は慌ててゴンドラに急制動を掛け、後輩ちゃんは不思議そうに眉をひそめた。
水路の向こうに見える、街道の一角のカフェテラス。そこでカップを傾ける人物に向かって、私はびしりと指を向けた。
「天津さん発見! よぉーっし、行くわよ〜」
「また、アリシアさん談義ですか……藍華先輩のでっかい悪い癖です……」
後輩ちゃんの呆れ声には知らん顔をして、灯里にゴンドラを停めるよう身振りで指示をする。私のアリシアさんへの想いは、お子ちゃまな後輩ちゃんなんかには分からないわよねぇ。
「藍華ちゃん、オッケーだよ」
パリーナに縄でゴンドラを結び付けた灯里の声は、後輩ちゃんと違って嫌味なところは全然無い。むしろこの子にそんな黒い部分あるのか、って思う時もあるくらい。今みたいな状況では、灯里の素直すぎるところがとってもありがたい。後輩ちゃんや晃さんみたいな性格だったら、きっとこうはいかないもんね。
「ナイスよ、灯里」
親指を立てた拳を突きだしてニヤリと笑ってみせると、褒められたのが嬉しいのか、灯里もふにゃりととろけるような笑顔を見せた。こういうとこ、女の私でも可愛いなぁって思ったりする。小動物みたいって言うのか、守ってあげたくなると言うか。甘やかすのは灯里のためにならないから、私はそんなことしませんけど!
私は真っ先に街道に降り立つと、体を伸ばして、愛想のない後輩ちゃんの顔を覗き込んだ。