ARIA 夢小説

□海まで歩く
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 空気は痛いくらいに冷たく、張り詰めていた。雲は厚く垂れ込めていて、夕方にはまだ時間があるのに辺りは薄暗く、日差しもほとんど無い。もしかしたら雪が降って来るかもしれない。

 本日最後の仕事を終えARIAカンパニーに戻ると、先客が居たのか賑やかな声が外に漏れてきた。オールを所定の場所に置き2階に上がると、ますますその声は大きくなる。


「恥ずかしい台詞禁止!」


 その一言で、先客が誰かすぐに分かった。大親友の晃・E・フェラーリが最も愛する教え子、藍華・S・グランチェスタ。姿が見えなくても、灯里ちゃんとのやり取りが容易に想像出来てしまって、笑みがこぼれる。びっくりさせようかな、なんて茶目っ気が起こるが、何の準備も無く良い方法が思い付かなかったので、窓からそっと様子を窺ってみることにした。いつ気付くかなと、中の様子を覗き込む。


「べっ、べべべ別に、私はアル君にそういうこと期待してる訳じゃないし!」

「ですが藍華先輩、でっかい顔が赤いです」

「うっさい!」


 もう1人の大親友の一番弟子、アリス・キャロルも一緒のようだ。どうやら藍華ちゃんの恋バナで盛り上がっているらしい。年頃だものね、と微笑ましい気分になる。恋愛で仕事が疎かになってはいけないが、恋愛は人間としても女性としても大いにレベルアップ出来る絶好のチャンスだ。藍華ちゃんの恋が実りますように、と心の中で祈る。


「灯里ってば、ホント変なところでスルドイんだか――あ、ああ、アリシアさん!?」


 言葉の途中で藍華ちゃんと目が合ったので、にこりと笑い掛けてみる。まるで幽霊を見たかのように驚く藍華ちゃんに、そんなに変だったかしらと少し不安になる。

 
「ぷいにゅー!」

「アリシアさん! いつからそんな所に居たんですか!?」

「あらあら、もうバレちゃった」


 藍華ちゃんの様子を見た灯里ちゃん達も、私に気付く。窓に駆け寄ってくる彼女達に手を振ってから、室内に入って行く。



 
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