神喰い 夢小説
□芽生えたオモイ
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贖罪の街。アナグラから最も近い、アラガミによって食い荒らされた都市のひとつ。その崩壊度もさることながら、アラガミの目撃率も他の崩壊都市と比べて飛び抜けて高いそこに、2つの影が伸びていた。
リンドウがMIAになった事件から数週間が過ぎ、療養を終え原隊復帰となったアリサは極東支部で唯一新型神機を扱うジンと共に、隊の仕事とは別に、個人的にアナグラを出ては実戦経験を重ねていた。
その理由は、先の一件により、自分の持つ力に疑問を持ったからだ。心身喪失状態だった過去のアリサは、両親の仇を討つことしか頭に無かった。言われるがままに訓練を積み、カウンセリングを受け、神機使いとしての教育を受けてきた。
――だが、その力が、大きな事件を呼び起こしてしまった。今ならば分かる、受けてきた数々の教育の違和感。あの頃から、歯車は狂うように設計されていたのだと――言い訳かもしれないが――感じる。もし、昔の自分が、その違和感に気付いていれば。
自分は未熟だったのだと、今ならば言える。今まで自分が戦う力だと思っていたものは、仮面のように不安定で剥がれやすいものだった。無責任に力があると言われ、それを信じ込んでいたに過ぎない。それに気付かず今まで驕り高ぶっていたのだから、勘違いも甚だしい。
だから、同じ過ちを犯さない為にも、自分のせいで悲しい思いをさせてしまった仲間達に報いる為にも、今度こそ、仮初めではない力を手に入れなければならない。その為の自主訓練だった。
アリサは乾いた地面を踏み慣らしながら、せわしなく周囲を見渡して警戒をする。その横で、ジンが欠伸を噛み殺していた。
「ねみー、だりぃー」
「そんなことばっかり言ってるとドジ踏みますよ」
アナグラを出てからというもの、十数分置きに愚痴を呟くジンに、アリサも何回目か分からない注意を呼び掛ける。こちらの心配をよそに、彼は「へいへい」と洩らすだけで、態度を改める様子は見られない。アリサは溜め息を吐く。戦い方を教わる為に付いて来てもらっているのに、これではどちらが教える方なのか分からない。
もう移動用の装甲車から降り、とっくに街の中心部付近に出て来ている。いつアラガミに襲われてもおかしくないのに。今回のターゲットはシユウ一体。取り立てて手強い相手では無いが、油断はベテランの神機使いの命さえもあっさりと刈り取る。増してはこの場には、ジンとアリサしかいない。ひとり力尽きればもう片方の命も危なくなる。もう少し緊張感を持つことは出来ないのだろうか――。