空の境界 夢小説

□優しい君
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「オマエは相当お似合いだな」

「ほっとけ! ちくしょう!」

 おまけにまんまと返り討ちに遭ってしまった。今年は真面目に生きようかとため息をひとつ吐いていると、ひょいと大凶の文字が視界から取りさらわれてしまった。

「え。お、おい」

 慌てて式の方を見やる。おみくじを取り返そうと反射的に手を伸ばしたが、式があまりにも真剣に大凶の文字を凝視しているので、思わず動きを止めてしまった。

「なに、どうした」

 聞きながら、思わず身構える。たまに式は突飛なことをしでかす。2人でいる時はまだいいが、さすがにここでは人目が多すぎるので止めて欲しい――そう祈っていると、式が動いた。

「ほら」

 目の前に差し出されたのは、大吉と書かれた和紙。式の意図が分からず、顔色を窺うと、いつもの無愛想な視線が乱暴にこちらの疑問を黙殺してきた。

「……ど、どうも」

「ん」

 大吉のおみくじを受け取ると、式は表情を変えず、だが納得したようにくるりと背を向け、また鳥居の方に歩いて行った。
 その不器用な姿に、思わず笑みがこぼれる。優しい奴だ。どうせならもっと笑えば分かりやすいし、可愛いのに。

 駆け足で式を追い掛ける。隣に並ぶと、ちらりと視線だけでこちらを確認してきた式に笑い掛けたが、すぐにそっぽを向かれてしまった。


「ところで式さんや、昼飯は何食うかね?」

「餅で良いんじゃないか?」

「え〜、朝も餅食ったのに……」

「ったく、我儘な奴だな……。じゃあ何なら良いんだよ」

「そーだなぁ〜……」






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