ARIA 夢小説

□知り合い以上、友達未満
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「後輩ちゃんはどうする? 良いのよー、無理して付き合ってくれなくても」


 少し意地悪なことを言ってみると、予想通り、幼さが残った表情がむくれるように険しくなる。
 きっと口にしたら本人は力一杯否定するだろうけど、この子は存外寂しがり屋だ。

 後輩ちゃんは人付き合いが苦手だけど、私と灯里には、結構心を開いてくれている。慕ってくれてる、と言っても良いかもしれない。こんな言い方したら傲慢かもしれないけど、ゴンドラの操舵技術は後輩ちゃんの方が上――正直言えば悔しいから認めたくないけど――かもしれないけど、人格的に言えば、私と灯里の方が多少は上だと思う。別に、後輩ちゃんのことを見下してる訳じゃない。ただ、後輩ちゃんの不器用すぎるところが、放っておけないってだけで。んでもって、私たちにそういったお節介焼きな面があるから、きっと後輩ちゃんも私たちのことを好きになってくれたんだと思う。


「いえ、私も行きます」


 むくれた表情のまま、ゴンドラを降りる後輩ちゃん。それを見た私と灯里は、気付かれないようにこっそりと顔を見合わせた。

 こういう反応が返ってくるのは予想済み、いわゆる確信犯ってやつ。寂しがり屋の後輩ちゃんが、いくら意地を張ったってひとりで待ってます、なんて言うはずない。何か言ってくるとしたら、「ホント藍華先輩は我儘なんですから。私は大人ですから、仕方がないから付き合ってあげます」なんて台詞なはず。

 素直になれない。つい意地を張っちゃう。
 ホント、放っておけないのよねぇ。


「決まりねー? よーし、じゃあ行くぞー!」


 灯里が「おーっ!」、アリア社長が「ぷいにゅー!」と元気良く返事をしてくる。ホント、ARIAカンパニーのノリの良さは尋常じゃないわよね。ここだけは後輩ちゃんとどっちがお子ちゃまだか分からない。もちろん、アリシアさんは例外として。

 私たちが目指すカフェに向かって一歩踏み出そうとする――よりも先に、アリア社長が我先にと転がるように駆け出した。


「あっ、アリア社長! 待ってくださーい!」


 灯里がアリア社長を追いかけて行く。その後ろを、後輩ちゃんが更に追う。気が付いたら置いてけぼりを食らっていて、慌ててその背中に追い付こうと石畳を蹴った。


 
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