ARIA 夢小説

□海まで歩く
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「もー、アリシアさんったら、びっくりさせないでくださいよー」


 駆け寄ってきた藍華ちゃんは、拗ねたように唇を尖らせていた。


「ごめんなさいね。あんまり楽しそうだったから、お邪魔したら悪いかと思って」

「アリシアさんが邪魔なんて、言語道断、天地がひっくり返ったってあり得ません!」

「うふふ。ありがとう」


 テーブルに座ると、灯里ちゃんが紅茶を淹れてくれた。お礼を言ってカップを掌で包むように持ち上げると、冷えた指先から、じんわりと紅茶の温かさが伝わってくる。無事に一日を終えた安堵感に、ホッと息を吐く。


「――ところで、何の話をしていたの?」


 先程聞こえてきた言葉でどういった類の話をしていたのかは分かったが、具体的なことは分からない。年上としてアドバイス出来ることもあるだろうと思ったのだが、


「藍華ちゃんとアル君、もがっ」


 事の顛末を説明しようとした灯里ちゃんは、必死の形相を浮かべた藍華ちゃんに口を塞がれてしまった。突然息が出来なくなりアタフタする灯里ちゃんを腕に抱えたまま、藍華ちゃんは顔を真っ赤にして叫んだ。


「いいんです! いいんです! 私の話は!」

「あらあら、そうなの? 残念。照れてる藍華ちゃん、とっても可愛かったのに」

「こっ、ここここっ、光栄でっす!」

「藍華先輩、そろそろ灯里先輩を解放してやってください。まるで溺れた魚です」


 アリスちゃんが、藍華ちゃんの制服の袖をひっぱりながら催促した。口調や声色にあまり変化はないが、眉間には険しい皺が寄っている。慌てて藍華ちゃんが灯里ちゃんから手を離すと、溺れた魚は一生懸命に深呼吸をし始めた。本当に、この3人組のやり取りは楽しい。懐かしい気持ちを呼び起こしてくれるだけでなく、元気を貰える気がする。


「本当に、貴女達は仲が良いのね」


 灯里ちゃんと、彼女の背をさすり合う2人に声を掛けると、揃ってハイ、と返事をしてくれた。ほんわりと温かい気持ちになって、アリア社長と顔を見合わせて微笑み合う。
 十分に息を吸った灯里ちゃんが元気いっぱいになると、皆椅子に腰を落ち着けた。温かい紅茶を喉に流し、それぞれがほうっと息を吐いたところで、藍華ちゃんが思い出したように身を乗り出した。



 
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