Fate/stay night・EXTRA

□過去の偉業に対抗せよ!
2ページ/6ページ

「奏者は『らぶらぶカリバーン』なるものを知っておるか?」

「……………………は?」


 斜め上過ぎて話の方向すら見失いそうな言葉に、何とか相槌――になっていると願いたい――を返す。どんなにセイバーの表情を深読みしようと、そこにからかいやふざけた感情は存在しない。
 反応に困っていると、曖昧な志の態度から何かを察したのか、セイバーは腕を組みながらひとつ大きく頷いた。


「……ふむ、知らぬか。まあ無理もない。余とて先日初めて耳にしたからな」


 落ち着いた声色には、どこか嬉しそうな響きがある。どうやらこちらの反応の薄さに対する不満は無いらしい。自分を非難する内容でもないようで、とりあえずホッと胸をなで下ろす。そして改めて、セイバーが口にした言葉を頭の中で反芻した。

 『らぶらぶ』……はともかく、『カリバーン』は中世ヨーロッパに多少興味がある者なら、知っている人間は少なくないだろう。

 円卓の騎士や聖剣エクスカリバーで有名な、アーサー王物語に出て来る、魔術師マーリンが石に突き刺さした王の選定の剣だ。
 まだ未熟なアーサーが、従兄弟のケイ卿の従者をしていた頃。ケイ卿の剣を忘れてしまったアーサーは、石に突き刺さっていたカリバーンを、それが王となる者だけが抜ける剣だと知らずに引き抜き、ケイ卿の下へ持ち帰って皆を仰天させたという逸話が存在している。
 
 そんな神話の代物じみた物に、『らぶらぶ』という単語は似つかわしくない。一体何なのだろうか。セイバーに問うと、可憐な暴君は満足そうに破顔した。


「奏者はこの聖杯戦争が、かつて地上の魔術師達によって行われた聖杯戦争を模したものだとは、既に知っているであろう?」


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ