MAIN

□せっかくなので美味しく頂くことにしました。
1ページ/1ページ


「ユーリくん!」

ばたんどたんと派手な音を立てて俺の部屋に飛び込んできたのは恋人であるゼロスだった。部屋に来るのは大歓迎だがもう少し落ち着いて静かに入ってこれないものか、そんなことを思いながら尋常じゃない程必死な形相のゼロスに「どうかしたのか?」と聞けばぼすんとベッドに上がってきてずいっと左手を見せてきた。

「何だよ、指輪期待してるならもうちょっと待っててくれ」

「なっ?!ばっかじゃねーの!そうじゃなくてほら!」

ずいっと左手が近付いてくる。そう言えばいつも着けているグローブはどうしたのだろう、そんなことを思いながら手を見ているとあることに気が付いた。何と言うか、少し赤くなっているところがある。これは所謂、あれじゃないのか?

「虫さされ?」

「そう!そーなんだよもう痒くて痒くて俺さま我慢出来ないー!」

ごろごろごろごろと人のベッドでもお構いなしに転がりまくるゼロスに思わず溜め息を吐く。虫さされでこんなにも取り乱すなんてこいつは本当に俺よりも年上なのだろうか。てゆーか魔物に攻撃されたときだってやせ我慢するくせにこんな小さなことは一々言ってくるんだから可愛くてしょうがない。俺に見せに来たところで痒いのが治まるわけでもないのにわざわざここまで来たのも可愛い。無意識ってやつ?うん、可愛いな。治せないならせめて何か痒みを少しでも抑える方法を教えてやれないだろうかと考えを巡らすも残念ながら何も良い案は浮かばない。

目の前では少し涙目になりながら左手を掻くゼロス。掻き過ぎの所為か刺された部分がほんのりと赤くなってしまっている。ゼロスは肌が白い分、余計にそれが目立つのだ。嗚呼、何と言うかただの虫に刺された後だって言うのに色っぽいと感じてしまう。俺は変態かと自分に突っ込むも左手の赤みが視界に入る度に思考がどんどんおかしな方向へと進んでいく。……ああそうだ、痒くなくさせる良い方法あるじゃねえか。くすりと我ながら悪人の笑い方をして未だに痒い痒いと唸っているゼロスにそっと近付いてその体を仰向けにさせた。何か本能的に感じ取ったのかゼロスは左手を掻くのを止めて恐る恐る俺の方を見ている。喰われる前の獲物って感じだな、びくびくしてて、すべー美味そうなやつ。

「えっと、ユーリくん?何でこんな雰囲気になってるわけ…?俺さま手が痒いだけで…」

「だからその痒みが気にならないくらいにすればいいだろ?そんな小さな痒み、直ぐに忘れさせてやるよ」

声にならない悲鳴を上げるゼロスを気にも留めず、俺は赤く染まっているその白い左手にキスをした(小さな痒みの代わりに大きな愛を、ってか?はは、色気ねえなあ)。



thanks! wizzy


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ