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□ゆっくりとね
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好きだとゼロスに伝えれば、その瞳は戸惑うように伏せられる。
でも口元を無理に笑わせて俺もだよと答えた。


俺はお前にそう言ってほしくて好きだと言ってるんじゃないんだ。
もちろん本当に好きでそう言ってくれてるなら嬉しいけれど。
でも、お前の言葉は違うだろ?


ただ、お前の気持ちが知りたいんだ。
今何に苦しんでるのか、何に怯えているのか。
その深い青には何が映っているのか。


これはきっと自分から言おうと思っていうもので、誰かに強制されて言うものではないと思うから、俺はお前に聞かないよ。
お前が俺のことをそれをいうに値する奴だと思ってくれるまでずっと待つから。


そしてもし、お前が俺を選ばないとしても、今はお前の傍にいるから。


「ゼロス、」


「……ん」


このキスは、恋人達がする甘いものじゃない。
きっと誓いとか約束とか、そういうもの。


その瞬間で終わるとしてもずっとお前を好きでいる俺の想いと、どんな道を進んでも心は俺にあげるというお前の想い。
はたから見たらただの滑稽な場面に見えるかもしれない。
でも、俺達にとっては何よりもかけがえのない瞬間。


「顔上げろよ」


「いや…」


お前は目を見られるのをひどく拒絶する。
たまに向かせれば、不安と動揺が入り混じった目を俺を見る。
まるで何もわからない迷子の子供のような目。
でもそれが本当のゼロスだと俺は知ってるから。


「まだ、怖い…?」


びくりと体が反応して俺の服をぎゅうっと握る。
震える手。それがどんな言葉よりもこいつの気持ちを俺に教えてくれる。


「大丈夫だから。待つよずっと」


「ありがとう…」


ずっと待ってる。
その目を合わせてくれる日を。


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