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□手渡しで、愛を
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早々に任務をこなし自分の部屋に戻ると、何故かちょこんという効果音がつきそうな感じでゼロスがベッドに座っていた。
俺とこいつはまあ世にいう恋人同士なわけだし別に問題はないんだけどなんかこう今日は違和感がある。
少なくても遊びに来た様には見えない。というか俺が部屋に帰ってきたことに気付いていない。
さっきからどこか神妙な面持ちで下を向いてる。


「ゼロス」


その言葉に、ようやく俺に気がついたのか顔をあげた。
俺と目が合った瞬間ゼロスの顔が一気に赤くなった気がするんだけど見間違いだろうか。
おかえりという声が嫌に小さいところをみるとあながち気のせいじゃないかもしれない。
でも、本当にそうだとして赤面する意味が分からない。


……ようやく俺のことをちゃんと意識するようになったとか?
そうだとしたらそりゃすごい嬉しいけどきっと違うだろうから無駄な期待はしないでおく。


「ユ、ユーリ…」


切なげに自分を呼ぶ声に色んな意味でどきりとしてしまう。
はっきり言って俺はゼロスにベタ惚れ状態なんだ。
そういう声を出されたら色々困るんだけどな、そう色々と。


でも放っておくわけにもいかず、ベッドに座っているゼロスの前に膝立ちになり白く女みたいに綺麗な顔をゆっくりと撫でる。
いつもなら女扱いするなとか近寄るなとか散々暴れるくせに今日はその様子が全く見えない。
見えないどころか俺には気持ち良さそうに見えるんだけど。
やっぱり何か様子がおかしい。明らかに変だ。
きっと俺が任務に行ってる間に何かあったんだろう。


「ゼロス、俺がいない間何してた?」


「べ、別に何も……」


分かりやす過ぎる嘘に小さく溜め息をつく。
こいつはこんなにも嘘が下手だっただろうか。
少なくても、出会った当初は俺が気付かないくらいには上手かった気がする。


でもきっと問い詰めたとしても素直に答える気はないだろうから深追いはしないでおくか。
そう思い立ち上がろうとすれば首にゼロスの腕が回されて目の前にゼロスの顔が迫る。
座っているゼロスに対して中腰状態の俺はかなり不安定な格好だ。
ゼロスの方に倒れるわけにもいかず、かといって離せと言えるはずもなくベッドで手を突っ張る体制になってる。


こいつはさっきからどれだけ俺を誘惑すれば気が済むのだろう。
はっきり言って俺の理性はそんな強い方じゃない。
だからこういうことされたらぷつんとしてしまいそうで怖いんだ。


そんなことを思ってると知ってか知らずか、そっと自分の唇に温かいものが触れた。
それが何かなんて嫌でも分かってしまう。


俺、ゼロスにキスされてる…?


驚きのあまり何も出来ずにいると自分の口内に舌が入ってくる。
そこで我に返り、とりあえずこのままやられっぱなしは性に合わない、と自分から舌を絡める。
いつも自分からするなんてことしないゼロスから主導権をとり返すなんて簡単なことで、すぐにゼロスから声が漏れ始める。


その声が俺の理性をどんどん緩めていく。
今すぐにでもゼロスを自分のものにしたい。もっと乱れさせたい。
とても口に出来ない欲望が次々に俺の脳を覆っていく。
それは自分でも抑えきれないぐらいに膨らんで、気付けばゼロスを押し倒していた。


頭の中で自分に警告する。
こんなにも衝動的に大切なこいつを抱いていいのかと。
もし嫌がったとき止められるほど今の自分は冷静なのかと。


そんな思いもまた、目の前のこいつは風みたいにさらっていくんだ。


「や、やめるなっ…、俺サマ、ユーリとしたい…!」


「………全く、ゼロスには敵わないなっ…」


その言葉を合図に体が重なる。
きっと今日は寝かせてやれないな、そう思いながらもう一度ゼロスにキスを送った。
謝罪の気持ちと、感謝の気持ちを込めながら。




「ひゃあ…っ」


何度めか、もう分からないほどにお互いを求めまた愛を吐く。
そしてこいつは泣いて、叫んで、声が枯れても、俺を求めて手を伸ばす。
まるで子供のように必死な姿が愛おしくて堪らない。


愛してると、何度伝えても伝わりきらない。
言葉と体で言いつくせる想いじゃないから当然なのだけど。
でもやっぱりこの赤に言わないと気が済まないんだ。


「愛してる、好きだ」


真っ赤な顔をして、幸せそうに微笑むゼロス。


ああ、だから敵わない!






「で、何があったんだ?」


ゼロスに上着を着せながら事の発端を尋ねると、ちょっと言いにくそうな顔をしながら俺の肩に寄り添ってきた。
何か今日は本当にいつもと違う。
事情中もありえないくらい素直に欲しがってきた時もあったし…。


「ジェ、ジェイドに言われたんだよ…。す、好きなら自分からもいかないと、いつか愛想つかされるぞって…」


またあいつは変なこと吹き込みやがって…!
…それが無かったらこういう展開はまずなかっただろうけど…。
でももうちょっと言い方ってもんがある。


「ゼロス、あの眼鏡のいうことは信じるな。俺はずっとゼロスが好きだ」


「お、おう…!」


…まあ、ゼロスの笑顔に勘弁して今回は許してやるよ眼鏡。




thanks! kitten



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