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□この痛みの名はなんですか
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「好きだゼロス」


「……馬鹿だねロイド君。俺サマは子供、ましてや男に興味は無いの〜」


「それでも、愛してるよ」


「…………勝手に言ってろよ」


そんな会話をしたのは随分昔のように思える。
(実際は今日、それも数分前の出来事なのに)


何を言ってもあいつは聞いてくれなくて。
好きだの、愛してるだの、甘い罠に俺をはめようとしてくる。


確かにあいつの言葉には誰でも落ちてしまうらしい。
実際、コレットちゃんやがきんちょがいい例だ。
はっきり言ってあそこまで誰かに想われる奴は俺サマだって見たことない。


でも、残念だなロイド君。
俺サマには効かない。
そんなものに騙されるほど俺サマは馬鹿じゃないんだよ。


窓に映る自嘲的な笑いにまた笑いそうになる。
何てひどい顔だ。
あんなぬるい奴らといるから俺サマまでおかしくなってきたのか?


(愛してる)
心の中でその言葉を復唱する。
何が愛してるだ。そんなもの信じれるわけがない。
だっていつだってその言葉は俺サマを裏切ったから。


街中に群がる貴族の女も、少し想いを寄せたあのメイドも、自分を生んだ親さえ、その言葉を本気で口にしてくれたことなど無かった。


だから俺は信じない。
馬鹿みたいに舞い上がって、どん底に突き落とされるなんてもう懲り懲り。
適当に生きて、その時がきたら。


「死ぬんだよ、ロイド君」


誰もいない部屋でぽつりと呟いた言葉に返事があるわけはなくて。
見計らったように降り出す雪が俺サマの心にじわりと染みた。



(愛なんていらない筈なのに、どうしてこんなに苦しいの?)






thanks! kitten


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