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□世を儚んだ君に問う
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「ゼロスはさ、戦って生きてる今を嫌だとは思わないか?」
「え?」
月の綺麗な夜、幼さを顔に残した見た目17歳の少年がひどく似合わないことを問うてきた。
戦って生きてる今が嫌だと思う。
それはどういう意味なのだろうか。
俺はこの戦う生き方を自ら選んだから嫌だとかそういうことは言えない。
(別に後悔してるわけでもないし。)
でも、こいつにとって今のこの状況は納得できるものではないのだろうか。
もちろん中にはこういう生き方を強いられたやつだっている。
もしかしたらこいつもそういう奴の一人なのか?
少なくても俺にはそんな風には見えない。
悪い意味とかではなく、ただ純粋にしっかりと自分でこの生き方を選択してきた奴の目をしているから。
「だって、人とか魔物、数の違いもあるけどどれにしたって何かの命を奪って生きてるんだぜ?何か、悲しくないか?」
ああ、そういうことか。
そんな考えはもう俺にはないけれどまだこいつにはそんな心が残っているのか。
それがいいことなのかどうなのかは俺には分からないけど、戦うことに慣れてる奴が多いここでこいつみたいな考え方は貴重と言うか大切だと思う。
命の重さを忘れることほど愚かなことは無いのだから。
でもきっとこの世界でこの考え方のまま生き続けるのは不可能だ。
その優しさ(愚かさともいうか)につけ込まれて死ぬに決まってる。
そういう世界なんだここは。
綺麗なだけじゃ、生きられない。
だから俺はお前に悲しいなんていえない。
まだ、死ぬわけにはいかないから。
「それが嫌なら戦うことを止めればいい。村人にでもなんでも、戦わなくて生きる方法なんていくらでもある」
「………」
目を丸くしながら俺の顔を覗きこんでくる。
この言葉はこいつにはきつ過ぎただろうか。
こいつの仲間達よりかは随分マシだと思うのだけど。
「どうした?」
「何かちょっと意外だなと思ってさ。ゼロスがそんなに真面目に答えるなんて。はぐらかされると思った!」
そう言ってにこりと笑う。
どうやら言葉自体は堪えてないらしいから良かったけど、その言葉は聞き捨てならない。
俺はどれだけ適当な奴だと思われてるんだ。
「でも、な」
「……?」
まだ何かあるのか、と少年の目を見る。
きらきらと純粋さを残す瞳と笑顔。
これだけ穢れを知らない奴が人を殺したことがあるなんてこの世界はやっぱり残酷だと思う。
(きっと見る奴によっちゃ俺達は狂ってるんだろうな)
でも俺はこの世界はそれだけじゃないと思う。
確かに嫌な部分もあるだろうけど、別に俺達だって戦いが好きなわけじゃない。
ただ守りたいもの失いたくないもの信じるもののために俺達は武器をとる。
贔屓でも何でもなく、俺はここの生き方も人間も全てが好きだ。
「真剣に考えてくれて嬉しい。だから、俺決めたよ。この世界で、俺に出来る精一杯のことをする!」
ああほら、この世界にもこんなにも綺麗な奴は沢山いるんだ。
まだまだここも捨てたもんじゃない。
thanks! hazy