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□ストロベリーハニー!
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「お前って料理とか出来んの?」


何気なく放った一言は意外とゼロスのプライドに触れたらしく、その3日後の晩、誰もいない食堂に連れて行かれた。
実はと言うと本当に何となくの一言だったから言ったことすら忘れてたりする。
俺の可愛い恋人はどうやら想像以上にプライドが高いらしい。
まあ、そんなところも可愛いんだけどな。





「ほら、出来たぜ!」


自信満々な声がしたと思ったら、とん、と目の前にパフェが置かれる。
フルーツを何種類も使っているのか見た目にも鮮やかで、普通の店においててもおかしくない見栄えだ。
でもものは見た目じゃないということを経験済みな俺はまだ警戒を解いたりしない。
肝心なのは、味。
見た目はまあ良いに越したことは無いけど、味が駄目なんじゃ元も子もないからな。


「滅多に自分から料理しない俺サマがユーリのために作ったんだ。ちゃんと味わえよ?」


それ、威張って言うことなのか?
まあせっかく作ってくれたんだし頂くとしますか。


生クリームとチェコがトッピングされているところをすくい口に入れる。
どちらかと言えば控え目な甘さだけど、正直かなり美味い。
勘違いしてた。こいつ一応貴族らしいから料理なんて出来ないと思っていたのに。


「どうよ?」


「……美味い」



その答えに満足したのか、嬉しそうに笑う。
はずみで一纏めにしているポニーテールがふわりと揺れた。


何というか、この光景が新婚夫婦のようだと思った。
実際はそんなに色気のあるものじゃないけど。
でも折角誰もいないんだ。
ちょっとぐらいのお手付きは許されるかもしれない。


「…おいゼロス。お前これ食べたのか?」


「味見で一口だけ食べたけど、ってちょ!?」


もっと顔を近くで見たくなって、ゼロスが言い終わるか終らないかで腕を引っ張り膝の上に乗せる。
さっきまで果物やチョコを扱ってたからか甘いにおいがする。
このパフェよりも、甘い香り。


食べたらもっと甘いだろうか?


軽く、唇を重ねる。
久しぶりに重ねた唇は、以前と変わらず魅了的で。
ついくらりとしてしまうのは俺のせいじゃないと思う。


「……ん」


短いキスをしてゼロスを見れば、小さく甘いと呟いた。
今までパフェを食べていてキスしたんだから当たり前だろと言えば、キスしろとは言ってないと怒られた。


そりゃまあそうだけど、と笑う。
何だかおかしいんだ。
怒ってるのにこいつは全然怖くなくて。


反省するどころか、もう一度を望んでしまう。


「ごちそうさん」


唇をぺろりと舐めてそう言えば、俺から顔を背けてこう言った。


「……おやじみたい」


おやじ?
それはまたひどい言い草だな。
俺はただお前を感じたいだけなのに。
お仕置きとばかりに体を強く抱きしめて、その首元に顔を沈める。
ふわりとまた赤毛が舞う。


そういえばゼロスは苺みたいだと思う。
見た目はこんなにも可愛いのに、たまに驚くぐらいすっぱい時がある。
恥ずかしがり屋で照れ隠しが下手な愛しい苺。


「ユーリ…っ。や、やめろって…!」


腰を撫でれば、慌てて止めに入ってくる。
どうやら今日はすっぱい日らしい。
おかしいな。パフェの苺はこんなにも甘いのに。


ああそうだ。甘くないなら、甘くすればいいんだ。


「ゼロス、良い香りだな」


そっと耳元で囁く。
ゼロスは耳元で話されるのを極端に恥ずかしがる。
だからこの状態はゼロスからするとあまり良くないだろう。
でも、残念ながら俺からしてみればこれ以上おいしい時はない。
悪いけど、止めてやれないぜ?


「え…?」


「お前から良い香りがする。果物、いや、生クリームか?好きだぜこの香り」


好き、という言葉にびくりと反応したのが分かる。本当にどこまでも分かりやすい奴。
でも、だからこそ愛おしくもあるのだけど。


「……っお、おおお俺サマから良い香りがするのはいつものことでしょうよっ!な、何を今更……ははは…」


じんわりとゼロスの顔が赤くなっていく。
ほんとに苺じゃねえかと内心笑い、その赤く染まった頬を撫でる。
成人してる男の赤面なんて普通は見たくないけれど、こいつは違う。
なんというか俺にしてみればそこらへんの女達よりもよっぽど可愛くて目の保養になるんだ。


そろそろ色々と限界かもしれない。


「俺が今一番食べたいもの、何か分かるか?」


聞き方によってはかなりストレートだけれど、今はこれぐらいが丁度いいと思った。
それにもう言葉を選んでる余裕なんて俺にはないし。


「……っ!す、好きにしろよ馬鹿っ」


さっきまでとは打って変わって素直で、少し照れている声。


ああほら、甘くなった。


「んじゃ、いたたきますっと」



(甘い君にご注意!)





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