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□甘えたがりの本音
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「………ん」


うっすらと目を覚ますと、光が見える。
もう朝か。
昨日の任務がハードな上に伸びてしまい帰ってきてからの記憶が曖昧だ。
そのまま寝てしまったのかもしれない。


ふと横を見ると、自分の隣が妙に膨らんでるのが目に入る。
おそるおそるめくるればそこには体を丸めて寝ているゼロスの姿。


(お、可愛い…じゃなくて)


何で俺のベッドでこいつが寝てるんだ?
昨日こいつに会った記憶はないんだけどな。
起こすべきか寝かせておくべきか悩んでいるとふいにゼロスの目が開く。


「……ユーリ…?」


「ああ。おはよーさん」


頭をくしゃりと撫でると気持ちよさそうに一度目を瞑ったあとゆっくりと体を起こした。
いつものこいつならそのままベッドを出てシャワーを浴びに行くか(朝一に浴びるシャワーは特別らしい)顔を洗いに行くかのどちらか。
どっちにしてもベッドから降りるのだが何故か今日は一向に動こうとしない。
体調でも崩したのかと思い名前を呼ぶとゼロスが体をくっつけてきた。


「……どうした?お前からこんなことしてくるなんて珍しいな」


出来るだけ冷静に言葉を発する。
こうでもしないと平静を保っていられないから。


「別に〜。俺サマとこうすんの、好きだろ?」


「そりゃ好きだけど…」


人間ってのはいつもと違うことが起きると妙に疑い深くなる生き物だ。
だから俺だって好きなゼロスでも警戒はする。
まあこいつのことだから単に気分の問題かも知れないけどな。


「……ユーリ」


誘うような甘い声を出したかと思うと、するりとゼロスの腕が俺の肩に回る。
何かおかしい。いつものこいつなら自分からこんなこと滅多にしてこない。


「本当にどうしたんだよ?」


背中を擦りながら問うが返事は無い。
ちらりとゼロスの顔を見ると目を瞑っている。
このまま二度寝する気なのだろうか。
それは困る。
本当に体調が悪いなら悪いで医者に見せないといけないかもしれないし、
そうじゃないとしても何かあったのは間違いないのだからこのままではまずい。


ゼロス、と名前を呼べばさっきよりもぺたりと俺にくっついてくる。
どうやら離れる気はないらしい。
嫌なわけではないけど、ほっておけば今日一日ずっとこうしていそうだ。
いつものように任務だってくるから俺達だけこうのんびりはしてられない。
分かってはいるけれど、でもどうしてもこいつを無理矢理離すが出来ない。


(こいつの場合、拒絶されたと思いそうだしな…)


結局、ふわふわとした髪を撫で始めた。
まるで猫でも相手にしてるみたいだと思う。
いつもは自分から近寄らない癖に、急に甘えてきて。
気分屋で可愛い猫。


「ユーリ…」


小さくゼロスが俺の名を呼んだ。
いつものこいつと思えないほど甘えた声。
俺にそういう扱いされるの極端に嫌がっているのに今日は本当にどうしたんだ。


このままじゃ埒が明かない。
そう思い、もう一度ゼロスに問う。
するとゆっくりと俺の体から離れて俯いてしまった。
前髪の間から赤く染まったゼロスの顔が見える。
どうやら一応は恥ずかしいと思ってるらしい。


「き、昨日…」


「え?」


「すぐ終わる任務だって言ってたのに帰ってきたの夜中だったろ…」


そうだった。昨日は任務が長引いたんだっけ。
確かそのせいで昨日はろくにゼロスと話していないような気がする。


「だ、だから俺…」


そう言ってゼロスはその後の言葉を言うのを躊躇うかのように押し黙ってしまった。
その態度でピンとくる。ああなるほど。
どうやら今までのはそういうことらしい。


全てが分かってしまうと自然と頬がにやける。
でもこれはしょうがないこと。
だってこいつの今までの行動はすべて俺に会えなかった寂しさから来たもので。
それはつまりそれだけ俺のことを想ってるということだろ?


「ゼロス…!」


離れていた体を今度は自分から引き寄せて思いっきり抱きしめる。
どこまでも甘えるのが下手な俺の愛しい恋人。
その不器用さが愛しくてしょうがない。


「今日は離れないからな…」


離れるだって?
そんな勿体ないことするわけない。
こんなにも可愛いお前がここにいるというのに!



(離す気なんて、さらさらないよ)













「で、なんで朝俺のベッドにいたわけ?」


「……朝一番にユーリに会いたかったんだよ!悪いか!」


「…………」


(こいつは一体どこまで可愛いことをすれば気が済むんだろう…)


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