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□憂鬱ヒーロー
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※CP要素薄め。ロイドとゼロスは不仲!とげとげしい会話注意!




「ヒーローだもんね、ロイド君は」


お前を一人にしたくないと腕を掴んで抱きしめれば、ガラスのように冷たく鋭い言葉がかえってきた。
誰も受け入れない決意でもしてるのかのような。(それを決意と言っていいのか俺には分からないけど、それほど強いなにかだ)


目を見れば確かに笑っている。
笑っているけど、笑ってない。
何もかも諦めた笑顔とでもいおうか。
美しいと言えば嘘じゃないけれどその言葉でかたずけるにはあまりにも印象深い瞳。
これがこいつの生き方なんだ。
ゼロス・ワイルダーという男なんだ。


でも、こいつは一つ間違えている。
俺はヒーローなんて立派なものじゃない。
仲間がいないと何も出来ないただの子供。
口先だけだと言われればそれまでなんだ。


俺は、ヒーローなんかじゃない。


「優しいなロイド君は…」


俺の腕の中でゼロスが動く。
離せと言ってくるのかと思えば、自分から俺の背中に手をまわして強く抱きついてきた。
こいつの行動が分からない。
少なくてもこいつが俺のことを良く思っていないのはそこまで的外れな考えじゃないと思っていたけれど。
違うならそれはそれで嬉しいけどこいつの場合は決して行動イコール本心ではないから判断に困る。


「お前、俺のことヒーローだとも優しいとも思ってないだろ?」


ほぼ直感で感じた言葉をそのまま口にする。
でもはずれではなかったらしく、どんっと俺の体を突き放した。
一瞬かなり驚いた言葉で俺を見てにやりと笑った。
俺、こいつのこの笑い方好きじゃないな。
全部を隠してしまうから。はぐらかされてしまうから。


嫌いなら嫌いだと言われても良い。
でも、辛いなら辛いと言って欲しいんだ。


「…否定しないんだな。でもまあそのとーり!俺サマはお前のことなんてこれっぽっちもそんな風には思ってない」


ああやっぱりそうかと納得してしまう。
初めてこいつに会ったときから今まで、こいつから仲間に向ける視線で見られていることが無かったから少しは気付いていた。
何故だかわからないけれどこいつは俺のこと少なくても友好的には見ていないって。
悲しかったけどしょうがないと思った。
口先だけってのはコレットの時に実感したし、優しくなんてない。
きっと、ただ何かあった時自分はなにかしたんだという自己防衛が優しさに見えているだけ。
やっぱり、ヒーローなんて柄じゃない。


でも、それじゃあこいつが気になるのもそうなのか?
ただ自分のためだけなのか?
そんなの、なんか嫌だ。
嫌?なんだよそれ。
こんな感情知らない。もったことない。
なんだか胸が苦しくなる。これは一体なんだよ。


「どうする?危険分子は追い出すか?」


考え込んでいるとふいに声をかけられる。
きけんぶんし。聞き慣れない言葉だ。俺の脳内には登録されてない。
危険と付くからには邪魔なものと言うことだろうか。
きけんぶんしを追い出す。
つまり、こいつを追い出すかということか?


それは。


「嫌だ」


「………え?」


嫌だ?待てよ俺。答え方おかしいだろ。
追い出すか追い出さないかと聞かれているんだ。
普通はいかいいえで答えるところじゃないのか?
なんだよ「嫌」って。
おもいっきし変な目で見られている。
ああもう恥ずかしい。


…………でも、あながち間違ってないかもしれない。
だって本当にこいつがいなくなるのは嫌なんだ。


「なあ…」


「なんだよ?」


お前は俺のこと嫌いか?
そう聞けば目を丸くした後、嫌いだぜと言われた。
嬉しかった。もちろん嫌われていることに対してじゃない。
初めて最初から本音を言ってくれたから。(それこそ本音じゃなくて良かったのに、とも思ったけれど)


嫌いから下には下がらない。
なら、俺だって上に上がれるはずだ。
好かれてもないし信頼もされてないこの状況から抜け出せるかもしれない。
すごく勝手な想像だけど俺にはどこからきたのか分からない自信があった。
口だけだった俺。今度こそ言葉に出したことを実行できるだろうか。
いや、しないといけない。


いつか、こいつのヒーローになれるように。


そのための、第一歩だ。


「ゼロス」


呼びなれなれない名前を呼ぶと、サマーシャワーの色をした瞳が俺を見据える。


「絶対に俺のこと、好きにさせるからな」




さあ、もう後には戻れない。




俺に落ちる、覚悟は良いか?














覚醒ロイド君!


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