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□アリアの誘惑
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※ゼロスがおとめなおんなのこ!





任務帰りの俺の目に飛び込んできたのは雪のような白と花のような桃色の服に身を包んだ少し涙目のゼロス。
着飾っているのは服装だけでなく髪型もふわふわと可愛らしくカールだし薄く化粧までしている。
これは一体どういうことなんだろうか。
後ろの方でエステルやらルーティ、コレットを始め何人もの女性陣の姿が見える。
ほぼ間違いなくこの格好をさせたのは後ろの奴らだろう。


お嬢さん方は全く何を考えているのやら。
そう思っていると、ゼロスがきゅうっとスカートを握りながらゆっくりと俺に近寄ってくる。
かなり恥ずかしいのか顔が林檎のように赤くなっている。
……ああこれは色んな意味でかなりやばいかもしれない。
少しだけ、感謝、かね。


「ユーリッ…!任務お疲れさま。…………あの、さ。そこまで疲れてなかったら、…その、えっと…」


そこで、もごもごと口を動かしながら言葉を濁す。
それじゃあ任務お疲れしか言えてねえよ。
折角こんな格好までしてるってのに勿体無い。
まあこういう時だけ妙に女らしいところ、ってのも可愛いしいいか。
未だにあ、やら、う、しか言えてないゼロスに軽く笑い背中を押す。
自然と足は前に出て出口の方へと向かう。


「なんか用事があるんだろ?ほら、いくぞ」


「う、うん…!」


照れながらも嬉しそうに微笑む様子を見て一安心しつつ、後ろの女性陣を見る。
これで良かったのか?と視線を送ればルーティが親指を立てた。
どうやら女性への接し方は合格だったらしい。
それはなによりだ全く。


ゼロスに案内されるがまま足を進めていく。
ついたのはいつもメンバーが使う道具やら武器やらを補充するのに利用している街。
このあたりでもかなり大きい方の街だろう。
聞くところによると用事というのは不足している道具の調達らしい。
確かにここなら一通りのものは手に入る。
でも、たかがそれだけのためにここまで気合を入れたのか?
それは少し腑に落ちない。


遠回しに聞いても意味が無いだろうと単刀直入にその格好をしている理由を聞くと、本日何度目かの赤面をして口を開く。


「みんなが俺サマだってオンナノコなんだから偶にはこういう格好しろって。……あ、うるさい奴らには自分達が言っとくから買い出しついでにゆっくりしといでだってさ」


流石我らが女性陣。
そこら辺の気遣いや気の抜き無ささは完璧だな。
伊達に女やってません、てか。
それにしても俺らの中でうるさい奴らって言うと誰に当たるんだ。
チャット?ジェイド?リフィル?キール?それとも他の誰か?もしくはその全員か?
ま、チャットやリフィルは同じ女ってことで理解があるだろうし他の奴らも女性陣を全員敵に回すようなこと、馬鹿じゃないからしないだろう。
お言葉に甘えてのんびりとさせてもらうのも悪くねえかもな。


(こんなゼロスが見れるチャンスなんて滅多に無いだろうし?)


恥ずかしいのか視線を泳がしながら歩いている姿はいつものゼロスとは似ても似つかない。
今ならアニーやクレア並におしとやかなんじゃないかとまで思う。
可愛いかって聞かれればそりゃ可愛いに決まってる。でも、正直少し物足りない。
ということはつまり俺が好きなのはいつもの小生意気なゼロスってことか?
それはそれで随分な趣味だな俺。


あ、と小さく声を上げてゼロスが焦ったように俺を見る。
何事かと思いきや今日食事当番の日だとか言いだした。
その答えに思わずこけそうになる。


「食事当番ぐらい誰かが代わってくれるだろ?ゆっくりしてこいっていってんだから」


「みんなちゃんと守ってるんだ。自分だけ我が儘なんて言えないだろ」


だから当番に間に合うように帰るぞと言ってずかずかと目的の店に入っていく。
……あんな大股広げて入ってたら店の連中が驚くだろ。
全くいつも男みたいな格好してるからああいうところでぼろが出るんだ。
そう思い軽く溜め息をついて店の中に入っていく。


見慣れた店内。そこまで新しい店じゃないけれど船長の知り合いだとかで少し安めに道具やら武器を売ってくれる。
店主に軽く挨拶して品定めしているゼロスの横に並んで、買い物リストを覗きこむ。
アップルグミに、オレンジグミ。ここら辺は良く使うから多めに買っとかないとな。
……ん、クジグミ?誰が使うんだ。絶対普通のグミ買った方がいいだろこれ。
イケテナイチキン…。これってわざわざ買うものか?っていうか売ってんのか?
何やら用途不明のものまで書かれているが買わないわけにもいかずカートに入れていく。


比較的要領の良い俺とゼロスだったからか買い物はすぐに終了した。
レジに並んだ時店主に今日は随分と女の子らしいと言われて顔を真っ赤にして否定していたゼロスはなかなか見ものだったな。
どっさりと両手に荷物を抱えて店を出る。
店を出る際に壁に掛けてある時計を見て時間が危ないと言ってゼロスは早歩きで来た道を戻っていく。
ああ結局ゆっくりなんて出来なかったなとふわふわとスカートを揺らしながら歩くゼロスを見て思う。


(もう少し、こういうゼロスを見ていたかったかもな)


あ、と言ってゼロスが立ち止まった。
今度は何だと顔を見れば何故か頬を真っ赤に染めている。
夕焼けと重なっているから余計にそう見えるのかもしれない。
荷物を持っていない方の手で俺の手を引き路地裏に連れていく。
訳が分からずどうかしたのかと聞けば、ゆっくりと自分の荷物と俺の持っていた荷物を地面に置いた。


「……今日は、付き合ってくれてありがとう」


それだけ言って俺の手首を引っ張り互いの体を近付けたかと思うとそのまま。
触れた瞬間、ふわりと柔らかい赤毛が俺の頬を撫でる。
とても愛しい時間だったけれど、すぐに顔を真っ赤にさせて離れてしまった。
どうやらさっきのが俺のお姫様の精一杯だったらしい。


可愛い奴、そんな当たり前のことを想いながら俺はもう一度自分から温かさを求めた。


(どんなに可愛い服だって、君には敵わないよ)












thanks! 38℃の欲槽

おんなのこだってきめるときはきめるんです。


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