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「なあ出口まだか〜?」
「お前が黙ってればすぐ着く」
なんかだんだん俺に対しての態度酷くなってないか?そう言って頬を膨らませる男の顔をムッと睨んで俺サマは歩く。
あんなことしといて普通の態度取れって方が無理だと思う。
あああ駄目だ駄目だ。
あの時のこと思い出すとなんというかく、唇の感触みたいなものまで蘇ってくる…っ。
お、俺サマ気持ち悪いっ!
早く出口に出てこいつとさよならしよう。
確かもうすぐ出口の筈なんだ。
あ、ほら見えてきた。
よし、よし。
「ほら待ちに待った出口だぜ?」
「お、マジだ。ふ〜助かった」
助かったのは俺の方だよ。
何がかなしくてこんな変な奴と森で会ったりクレープ作らされたりキ、キ、キ、キスされなきゃなんないんだ…!
そうだ。きっとこの森の中であったことは夢。ドリーム。
こいつもきっと森の精霊か何かに違いない。
迷い込んだ俺サマをからかって遊んでやがるんだ。
だからこれも夢。
俺サマが何故か出口一歩手前でこいつに抱きしめられてるのも夢なんだ。
そう、ドリーム……って!
「ななななな何してんだよっ。あれか!?森の精霊の挨拶か!?」
「ははっ。頭大丈夫かお前」
ム、ムカツク…ッ。
最後の最後まで意味分かんねえし癇に障る奴だ!
この森出たら即効でこいつのこと忘れてやる。
あれ?記憶喪失の俺サマからまた記憶取ったらどうなんの?
「なあ、もう一回キスしていい?」
俺サマの思考を遮ってまたこいつはとんでもないことを。
何がしたいんだ。キス魔か、変質者か。
なんで一度ならず二度までも男にそんなことされないといけないんだ…。
「いいぜ」
はっ!?
ちょ、俺サマ何言ってんのっ。
誰だ今俺サマの口だけ操るとかいう微妙に器用なことしたの!
有り得ない有り得ない。
ああちょっと顔近いんですけど…!
「ち、違うっ。今の冗談…」
ちゅ。
この森にて、二回目の可愛らしい効果音。
何度でも言おう。これは可愛いもしくは美しいハニーとの間で生まれる愛の効果音であって野郎同士から発せられていいもんじゃ…っ。
パニックになっている俺サマを前にこの精霊は最高に良い笑顔でとんでもないことを言った。
「……最中は嫌がらないよなお前」
「………っ!?」
なんてことさらりと言ってくれるんだこいつ!
合意の上での行為みたいじゃんっ。
俺サマは確かに抵抗しなかった。抵抗はしなかったけれど、それはキスって行為に対してちょっと悪くないかなとか思っただけで…!
ってな、なに言ってんだ俺サマ!
それ思いっきし肯定してるから!認めてるから!
「ほら、出ようぜ?」
初めて会った時と同じ、長い黒髪を靡かせて鋭い目で俺サマに向かってそういうと、俺サマの腕を引っ張って歩き出した。
何で最後だけそんなにかっこよくなるんだよ。
反則だ。今までみたいに馬鹿なこと言ってればいいのに。
本当に癇に障る。調子狂う。
そんな顔されたら、
「……好きになるだろ」
顔が真っ赤な俺サマと不敵な笑顔のこいつは同時に深い森から足を出した。
(短い短い、旅の終わり)
俺サマとこいつの記憶は戻ったかって?
この後俺サマ達はどうなったかって?
それは、ハニー達のお好みのエンドに任せるよ。
5.「恋人どうしだったりしてねー」
「…いま俺は確信した。きっと記憶喪失になる前から、お前が嫌いだったと」
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空をとぶ5つの方法