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□君にあげたい愛と憎しみ
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※ジーニアスが黒!微破廉恥!




いつもいつも僕を見下して子供扱いするあいつが気に食わなかった。
確かに歳はあいつの方が上かもしれないけれどそれがどうしたっていうんだ。
そんな事を考えているうちにどんどんあのアホ神子へのイライラが募っていって嫌がらせでもしてやろうと企む。
だって、僕ばっかし屈辱を味わうなんて不公平だろう?


どこにでもある普通の風邪薬をあいつの飲み物やら食べ物にそっと混ぜて副作用の眠気を誘う。
自分の異変に気付いたのか、皆よりも早くに席を立ち部屋に戻る姿を僕は薄く笑って見送る。
嗚呼、僕って最低なのかもしれないけれど、これも全部あのアホ神子が悪いんだ。
部屋に戻ると思った通りベッドの上で目蓋を閉じて浅く呼吸を繰り返している赤毛。
寝込みを襲うなんて卑怯かと思ったけれど、真正面からこいつに立ち向かってもへらへら笑われてお仕舞いだから仕方がないと自らを弁護する。


小さなアホ神子の吐息だけが静かな部屋に響く。
何だかすごくいけない事をしようとしているみたいで思わずベッドに近付く歩みを止める。
だって僕はしようとしているみたいじゃなくて、しようとしているのだから。
最後の理性が警告する。
ここで止めれば、何も無かった事に出来るのだと。
でも今までの事を考えると、どうしてもこいつに負けてばかりは嫌だという思いが捨てきれない。
結局こうでもしないと気持ちを抑える事の出来ない子供なんだ僕は。


静かに静かにベッドに乗り上げアホ神子の両手首をベッドサイドに縛ると、微かに赤毛が揺れうっすらと目蓋が開く。
自分の上に僕が乗っている状況が理解できないのか眉をひそめて何してるんだと睨んでくる。
いつもみたいに上からだと、少し、ほんの少しだけ怖くなる時があるけれど、今はちっとも怖くない。
その事実に優越感を感じ、僕は皮肉の様な笑みを浮かべた。


「見て分からないの?流石アホ神子だね」


平然と答える僕を驚きと疑いを混ぜたような表情で見てくるこいつ。
確かにいつもの僕はこんなに嫌な笑い方はしないからそのギャップに驚くのも無理ないのかもしれない。
だってこんな僕は姉さんだって知らないのだから。
でもあんたはいつもの何考えてるか分かんない顔より今の方が困惑してる表情の方が可愛げあると思うよ。


「がきんちょの癖に随分大胆じゃねえの。人が寝てる間にエクスフィアまで取ってくれちゃって」


強がりなのかムカついているのか生意気な顔でアホ神子はそう言った。
いつもはこの言葉にまたイラついて怒っていたけれど、何故か今は怒りが湧いてこない。
余裕とはまた違う何かがゆっくりと僕の中に浸食してくる。
もっとこいつの乱れる姿が見たいと、僕自身の脳に訴えかけてくるようだ。


確かに屈辱的な事の一つや二つをしてやろうと今に至るのだけれど、今の自分がどこまでを望んでいるのかが分からない。
でも確実に言えるのは、今思考を投げ出して本能に従えば確実に目の前の男を離せなくなるだろうということ。
理性のない自分なんて獣の様だと思うけれどそれも良いかもしれないと思う自分も確かにいる。


今はそんな獣の様な自分に委ねるのも良いかと、白すぎる首に顔を沈めて軽く舐めた。
甘い香水がふわりと香り僕はますます歯止めが利かなくなっていく。
二、三度舐めればくすぐったいのか感じているのか足を必死に動かして必死に僕から離れようとする。
その拍子に纏まっていた赤い髪がはらはらとシーツに散らばる光景が素直に綺麗だと思う。
でも美しすぎるそれはどこか触れてはいけない様な雰囲気で、でもだからこそ触れたい。


(どんな形でも良いから、僕だけを見てよ)


そんな独占欲の塊の様な事を僕が思っているとあんたは分かっていないんだろうね。
でもそれでいいよ、あんたはただ、その綺麗な顔を僕に見せてくれればいい。
半ば無意識に黒のタンクトップの中に手をいれると流石に焦った様子でジーニアス、と僕の名を呼んだ。
妙に色の入った声で呼ばれ、申し訳程度に残っていた理性が一気に持っていかれる。
わざわざ自分から煽る様な事をするなんて、やっぱりあんたはアホ神子だ。
もう止まらないよ、止められない。


ねえ、それに、まんざらでもないんじゃないの?
嫌ならそんな物欲しそうな目をしないでいつもみたいに僕を睨んだらいいだろ。
嫌ならもっと暴れて僕を蹴飛ばしたらいいだろ。
それをしないのは、この先を望んでるってことでしょ?


「ね、僕が欲しい?」


「…誰、がっ」


嘘つき。本当、どこまでも素直じゃないし可愛げもない。
でもまあ、そっちの方が僕的には面白いけど色々限界だからもう遊んでいられないみたい。
それに僕はあんたに屈辱を味あわせるためにこうしているんだから目的を果たさないとね。
全部教えてあげるよ、僕の気持ち。


「…好きだよゼロス」


動揺に揺れる透き通るような青の瞳に自分が映っているのに満足して僕は笑った。
そしてゆっくりと、赤に沈む。


(憎しみも愛しさも全て、教えてあげるね)













thanks! hazy

「全部全部あんたのせい!」リメイク作品。


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