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□拍手3.溺愛注意報
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溺愛注意報



(ルークとゼロス)






食堂でガイと食事をしていたらガイの後ろを通る見知らぬ人影が目に入った。
まるで俺達なんて居ないかのように真っ直ぐと前を向き歩みを進める。
それがあまりに堂々としていて見入っているとそいつは俺達から少し離れた所で食事をしていた女性陣に話しかけ始めた。
よくみるとルビアやイリアと一緒にいる金髪の少女も見た事が無い気がする。
いつも間にかメンバーが増えていたみたいだ。


にこにこと実に楽しそうに話をしている姿は遠目で見れば女の人だと思われても仕方のないくらいの美人で思わず見惚れてしまう。
多分ガイと一緒じゃなかったら勘違いしてただろうなあと思いながらパスタを口に運ぶ。
その時、ふいにそいつと目が合ってどきりとしてしまう。
どうして良いか分からなくてとりあえず頭を下げたのだが気付かなかったのか何なのかまたイリアと話し始めてしまった。
でも、どこか良かったと思っている自分がいる。


(心臓がどきどきしてる)


一目惚れなんて言葉があるけどこれもその類なのだろうか。
でもこれはおかしいだろ、だって、男、だし。
ううん、ナタリアとかルビアが言ってた気がする、恋をしたら何にも関係なくなるんだって。
それは性別にも当てはまるのか、なんて、恥ずかしくて聞けないな。


その時、ガイが小さくあっと声を上げ俺の後ろに視線を送っている。
何だろうと振り向けば今まで女性陣と話していた筈のそいつが俺の後ろに立っていた。
予想外の出来事に驚いて俺は初めましてすらまともに言えない。


(心の準備が、まだ)


どこか鬱陶しそうな顔をしながらそいつは口を開いた。


「俺サマはゼロス・ワイルダー。今日からここに世話になる。ちなみに剣も魔法もお手の物。じゃ」


まるで台本でも読んでるかのような感情も何も籠っていない言葉に俺とガイはぽかんとしてしまう。
でもそんな俺達なんて知った事ではないとでも言う様にひらりと踵を返し食堂を出ていってしまった。


嗚呼本当に驚いた。
棒読みにもだけどあんなに綺麗な人があんな喋り方をするなんて思わなかったのだ。
さっきも女性陣と楽しそうに話していたというのにこの扱いの差は何なのだろう。
何か気に触る様な事をしただろうか、いや、初めて会ったというのに気に触るも何も無いと思うのだけれど。
何だかショックだ、もっと仲良くなりたいと思っていたのにあんな態度を取られてしまってはとてもじゃないけれどなれそうにない。
はあと溜め息をつくとぽんぽんとガイが俺の肩を叩いた。


「気にするなルーク。きっと彼にも何か訳があるんだよ」


優しい親友の言葉に少しだけ心が軽くなる。
そうだよな、すぐに後ろ向きになるのは俺の悪い癖なんだよな。
そんな所を変えたいという意味でも俺はこうしてここにいるのだからこれぐらいでへこたれる訳にはいかない。
ちゃんと話を聞いて、俺に出来る事をして、友達になってくれる様にお願いするんだ!


そうと決まればと皿に残っているパスタをぱくぱくと食べ終え席を立つ。
喉に詰めるぞと言うガイの言葉も気にしていられない。
食べ終わると俺は早々に席を立った。


「ガイ、俺、頑張るよ」


「急ぎすぎないようにな、頑張れルーク!」


ありがとう、と早口で言うと数分前にあいつ、確か、ゼロスが通っていった道を追いかけていく。
きっとこれも俺の悪い癖なんだ。
少しの希望が見えるとそれがどんどん大きな希望に見えてきて止まらなくなる。


でも、今は、この悪い癖に少しだけ感謝かな。


(そう簡単にこの想いは消えそうにないよ!)



瞳に燃ゆる愛の炎



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