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□愛に溺れて二人で死ぬの
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※ルークちょっと黒め。少し破廉恥。21歳男性の兎耳はお好きですか。




「………………」


「……えっと、ルーク?」


嗚呼一体、これは何の苛めなのだろうか。
何が悲しくて男でしかも成人を越えている俺が兎耳なんてマニアックなものをつけなければならないのか。
そして何故ベッドに座らされてルークに直視されないといけないのだろう。簡潔に説明して欲しい。
ちらりと壁に掛けている時計を見れば俺がこの耳の姿でルークに見られ出してから十分以上が経過していた。
いい加減飽き無いのだろうか。というよりもここまで真面目に見ている意味が分からない。
そりゃ、女性陣がつければ思春期であろうこいつの視線が傾くのも仕方ないだろうが残念ながら俺は男。
どれだけ可愛らしい兎耳をつけても素行の悪いただの男なのだ。


そもそもの発端はエステルがこんなものを大事にとっておくのが悪い。
しかもそれをルークの前でつけるだなんて、本当にあのお姫様には敵わない。
本音を言えばさっきから嫌な予感がするので笑い事で済ませるうちに早々に取りたいのだがどうにもその願いは叶わなさそうだ。
どうやら自分は今のルークの様な無邪気で子供じみた表情に弱いらしい。


だからと言ってこのままでいるのは耐えられないのでもういいだろうと耳に手を伸ばす。


「……だ、駄目だ!」


「え、あっ!」


どたんばたんと派手な音を立てて床に椅子が転がった。
俺の手を制止しようとしたルークが勢い良くぶつかってきてベッドに乗り上げて、そのタックルに耐えきれなかった俺の体が壁に密着する。
二人の距離はそれこそ息が掛かるほどに近くて何故か背中が熱くなっていく。
柄にも無く、恥ずかしい、だなんて。
嗚呼どいてくれと言えば良いのに動転して声が出ないし、腕を動かそうとしても壁に押し付けられて動かない。


ルーク、ルーク、お願いだから離れてくれ。
何でか分かんねーけど心臓が爆発しそうなんだよ。
そんな事が言える訳無くてただひたすらに眼を瞑って体が離れていくのを待つけれど、一向にその時はやってこない。


不意に鼻先と鼻先がちょんと触れあうのを感じる。
そして耳元で囁かれたのは、可愛い、の一言。
その思いのほか低い男を感じさせる声に何故か心臓がどくんと異常な反応を示した。
違う。ただいつものルークはもう少し子供っぽいし無邪気な感じだから少し意外だっただけで!


(意識とか、そんなんじゃ)


「ユーリ、顔真っ赤。……恥ずかしかった?」


嗚呼!この厭らしい笑顔でにやりと微笑む男は誰だ。
こんな事を言ってくる男といつもの子犬の様なあいつが同じだなんて詐欺も良いところだろう。
でも一番許せないのはこいつの言葉を否定できない自分自身。
何歳も年下の奴にここまで良い様にされているなんて、とんだ恥晒しだ。


というよりも何でこんな事になってるんだよ、兎耳はどうした。視野からノックアウトか。興味の切り替えだけは子供のままか。
グルグルと頭の中が混乱してきて自分でも分かるほどに冷静を欠いているのが嫌になる。
20年以上生きているのだからこんな空気になるのは初めてじゃない筈なのにこいつ相手だと、どうにも上手くいかない。
知らないうちに主導権を握られて、いつの間にかこんな状況。


伸びてきた手が迷わず兎耳へと触れる。
もちろん飾り物のそれを触られたからと言ってもどうもないけれど、密接度が増してどうすればいいか分からなくなるんだ。
他の奴ならこうはならない。ここまで緊張もしない。何か、おかしいだろ。


好き勝手に耳を触る手を退ける事も出来なくてただ固まる俺が可笑しかったのか上から軽い笑い声が聞こえる。


「……っ、ほら、もういいだろ!」


少し怒気を込めてそう言えば渋々離れていく体。
やっと満足してくれたかと一息つこうとすれば顎を持ち上げられてルークと目を合わされる。
エメラルドグリーンの瞳が宝石の様にキラキラとしていてとても綺麗だな、なんてぼんやり思ってしまう。


そんな事を考えているうちにまるで当たり前の様に重ねられた唇。
するりと口内に舌が入ってくる。不快、ではないけれど違和感が拭えない。
せめて声を漏らさない様にしようとするけれど唇が深く交わっていけばそんな事を言う余裕も無くなってしまう。
まるで女の様な声を出す自分に嫌気がさす。


一度きりで終わらないそれ。
何度も角度を変えられて、その度に深くルークが侵入してくるようで体が震えて、目の前の白い服を掴むので精一杯。
情けないというかどこまで自分は女々しいのだろう。


透明な糸を引きながら離れていく唇を少しだけ名残惜しく思う。嗚呼、これは末期?


「今のユーリ、兎が発情してるみたいで、すげえ色っぽい」


このマセガキめ。さっきからペラペラと余計な事言いやがって…!
息を整えるまでにもう少し掛かりそうなので言い返す代わりにきつく睨めば楽しそうに笑い、誘ってるのか?と聞いてくる始末。
まだそういう経験はないと思っていたがどこかで意外と遊んでいるのかと思う程こういう事に慣れているように見えるのだが。
嗚呼、何かムカつく。


「兎って寂しいと死んじゃうんだろ?だから俺がいてやるよ」


その言葉と共に視界が赤で埋め尽くされるのを実感する。
嗚呼確かにどうせ死ぬならこいつの傍が良いだなんてとんでもない事を考えている自分が末恐ろしい。
こんな子供に良い様に扱われて翻弄されて、でも、求められるのが嫌じゃないなんて。


兎は寂しいと死ぬというなら、俺は愛に飢えたら死ぬのだろうか。
自分がそこまで繊細な生き物だなんて絶対に思わないけれど。


乱暴なキスに身を委ねれば、ふわりと兎耳が揺れた。


(離れないで、愛で満たして!)










thanks!  人魚


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