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□魔性の男
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昼間、歳不相応な程に明るく無邪気な笑顔を見せる男だけど、これでも一国の王。
その笑顔が全てな訳は無く時たま見せる王をしての一面は俺でさえも緊張してしまうものがある。
だが、それが全てというわけでもないのだから恐ろしい。

「なーに考えてるんだ、ゼロス?」

あんたの事ですよ、そう言えば男がつけあがるのを良く知っているから言ってやらない。
ただでさえこいつには俺の嘘は聞かないのだから、自分から言ってやる義理なんて無いだろう。

月明かりに照らされる部屋は落ち着く。
ふわふわと一級品のベッドに寝転がれば自然と眠気も誘われると言うものなのに、どうしてこいつは寝ないのだろう。
仮にも王なのだから、暇な訳じゃないだろうに。

顔の横に手をつかれて上から男が直視してくる。あまり、良い気分じゃない。
何ですか、とわざとらしい敬語を使えば眉間にゆっくりと皺が寄り不機嫌な子供が完成する。

「2人の時に敬語を使うなと言っただろ?」

「そんなの俺の自由でしょーよ。ってか、近いんですけど」

それはもう、金色の絹の様な見事な御髪が顔に掛かるぐらいに。
軽く払い退けて顔を背ければ、当たり前の様に首元に自身の顔を埋めてくる男を一体どうすればいいのだろうか。
はあ、と溜め息をつけば直ぐに顔が離れて不機嫌全開の声で名前を呼ばれた。

面倒臭い奴。
普通は一国の王に抱く事が無いだろうな感情を持ちながら、視線を男に移す。

「俺のでもお前のでも無い、香水の匂いがする。これ、女物だろ?」

全く、自分の飼ってる豚よりも鼻が良いのではないかと思わせる嗅覚だ。
確かに間違ってはいない。男に会う前に偶々会った貴族の女がキツイ香水をつけていたから多分それだろう。
いちいち説明するもの面倒でええそうですよと返事をすれば行き成り上着に手を掛けられた。

「……っ?!ちょっと、俺、今日スル気ないんですけど」

「俺はスル気分なんだ」

子供か。心の中でそう叫びながら必死に手を止めようとするが、一向に止まろうとしない手。
王と言えば玉座で踏ん反り返っているイメージがあるけれどここの王は例外。野生派なのだ。
だからこそ一度暴走すると手に負えなくなる。これも、この男の一面でもあるのだろう。

(…男の顔のあんたを知ってるのが俺だけなら良いのに)

そんな事を考えながら、俺の喉笛に唇を寄せる男を感じた。






thanks! h a z y


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