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□1000HIT記念小説 愛してる以上の何かを君に
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「これでいいかな?」
「お、いい感じでねーの?」
クレア特製のピーチパイをユーリとルークと一緒に食べていると、食堂の奥、台所から楽しげな声が聞こえてくる。
少し耳を澄ませば、聞き覚えのある声がする。
「ゼロスとコレット…だよな?」
そう、確かこの声は神子であるゼロスとコレット。
台所にいるということは何か作っているのだろうか。
「よーし、完成!」
「わあっ、美味しそうだね〜」
弾んだ声。
よほど楽しいのだろうか。
「あの2人、お菓子作りの趣味でもあったのか?」
「さあ?でも俺、ロイドからコレットの料理は賭けだっていわれたことがある」
「ゼロスも料理をするやつには見えないが…」
3人が3人とも深刻な顔になる。きっと考えていることは同じだろう。
何を作っているのかは分からないが、激しく不安がよぎる。
「1度様子を見るか?」
「それがいいかもな…」
話がまとまり台所へ向かおうとした時、丁度2人が中から出てくる。
ゼロスの手にはフルーツが沢山乗った大きなケーキ。
どうやら心配するようなことは無かったらしい。
それを見てると神子達と目が合う。
そして俺達を見るや否や意地の悪い顔でゼロスが言った。
「お、むさ苦しいねえ。野郎ばっかしで!」
いつ会っても口の減らない男だと思う。
以前マオに暗いといわれ考え込んだことがあるが、こうなるならこのままでいいかもしれない。
「会って最初に言うことがそれかよ…。それにしても大きいケーキだな」
「それ、お前らが作ったのか?」
ルークとユーリの言葉を聞き、神子達は顔を見合せて笑う。
なんというか歳の離れた兄妹のようだと思う。
「そっ!これは俺達からのロイドへの手作りケーキ!」
「いつもありがとうって気持ちを込めたんだよっ」
余りにも明るい笑顔についこちらまでつられて顔がほころぶ。
コレットはともかく、ゼロスはこんなにも素直に笑う奴だったとは知らなかった。
それほどロイドは大切な人だということだろうか。
「へえ。きっとロイドの奴大喜びするぜ」
「自分の為にこんなことしてくれたら誰でも嬉しいしな」
その言葉にコレットは嬉しそうに頷く。
「そうだといいな。ロイドには本当にたくさん助けてもらってるから」
「そうそう。あいつがいなきゃ、今の俺サマはいないし!」
その言葉に、神子として生まれた2人の苦悩が隠されているように思えた。
特別視され、自由を奪われ、運命を決めつけられて。
きっと生き地獄というやつだろう。
「…2人はロイドをどう思う?」
唐突に聞きたくなり、問う。
その闇から救ってくれたのがロイドだというのなら、2人にとってロイドは何なのかが気になったのかも知れない。
「難しいな。言葉だけじゃ、ロイドへの気持ちを言い表せないもの。でもね、」
「なんならロイドの側にいてみろよ。絶対惚れるから!まあでも一言で言うと、」
「「愛してる」」
じゃあ、後で!と形を崩さない様にバランスを取りながらパタパタと走っていく2人。
あまりにストレートな言葉を聞き、少しの間無言になる。
あんなに想われて、ロイドは幸せ者だとつくづく思う。
「…ははっ、すっごい愛されてるな〜、ロイド」
「ほんとだな。なんかうらやましいや」
「それほどロイドがすごいやつだということだろう」
そんなことを話していると、エステルやティア、クレア達の声が聞こえてくる。
どうやら他のメンバーは外で騒いでるらしい。
「…さて、俺達もロイドに負けないように頑張りますか」
「だな」
「ああ」
ユーリの言葉に、俺とルークも席を立つ。
いつか、ロイドのように誰かの特別になれるだろうか。
そう思いながら俺達はゆっくりと部屋を出た。
THANKS!1000HIT!