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溺愛注意報



(リオンとゼロス)






節操無し。馬鹿。浮気者。口を開こうとすれば出てくる暴言の数々。全て一人の人間に対するものだ。
だってこんな扱い、許せるはずがないだろう!
確かにあいつの、こ、恋人は僕の筈なのにどうしてあいつは違う奴ばかりにちょっかいを掛けているんだ。
嫌、別にちょっかいを出して欲しい訳ではない。それは鬱陶しくて敵わないからな。
でも、気に入らない。あいつは僕のものなのにどうして僕の隣にいないんだ。
それとも、僕に今まで恋人なんて存在いた事が無いから分からなかっただけで、これが普通なのだろうか。
それは何と言うか少しだけ、


「あれ、リオン君じゃねーの。何だよそんな寂しそうな顔しちゃって」


僕の思考を遮ったのは怒りと悩みの種である男、ゼロス・ワイルダー、本人だった。
寂しくなんて無い、と勘に触った言葉を訂正すれば冗談だってば、と軽い声。
嗚呼ムカつく。僕はこんなにも苦悩していると言うのに何故事の発端であるこいつがこんなにも飄々としているんだ!
これじゃあ僕が馬鹿みたいじゃないか。この男がこういう奴だと分かっていた筈なのに、いつまでも気にするなんて。


想いを告げる前はこんなにも心を乱す様な事無かった、どうして今は冷静でいられない?
(分かっている、確かにどうしようもない奴けど、…それでも、好きなんだ)
でも僕だけこんなにも動揺して苦しむのは納得いかない。別問題だ。


僕はこいつと違って複数の人間に好意を露わにする様な事出来ない、こいつしか見られないんだ。
こいつにも、僕だけを見て欲しい。
子供染みた考えかもしれないけれど、こいつが他の誰かに愛を囁くなんて冗談でも御免だから、気付かせてやる。
お前が想像しているよりもずっとずっと僕はお前の事を想っているのだと。


「……おい」


「お、機嫌直ったの、…ん?!」


ごんっ、と比較的大きな音が廊下に響く。
この廊下にいるのは僕とゼロスだけだから他の誰が振り返るでもなし、その音は空しく消えていく。


それにしても結構な音だったがぶつけたであろう後頭部は平気だろうか。
そう思い目の前の男を見れば、瞳は潤み涙が溜まっている。正に涙目と言ったところ。
とても文句を言いたそうだけれど口を開けないらしく、必死に僕に目で痛みと怒りを訴えている。


口に出して言えない?僕を怒らせるからそういう事になるんだ、と密着した体をもっと近付けていけば、自然とキスも深いものへとなっていく。
そう、こいつが頭を強打する事になったのは僕の体当たりとも呼べるようなキスをくらったからだ。
僕は悪くない、こいつが他の奴ばかりに構うのと、僕より身長が高いのが悪い。


するとゼロスは僕からのキスか頭部の痛みか、或いはその両方に耐えきれなくなったのかずるずると座り込んでしまった。


相変わらず不意打ちに弱い奴だ。悪い訳じゃないけれど、無防備すぎると思う。
そんな風に無防備だと他の誰かに同じ事をされそうになった時抵抗の一つも出来ないだろう!


「……リオン?」


「僕だけを見ろ、ゼロス」


軽い言葉を伝えるのも無防備になるのも僕の前だけで良いんだ。他の誰でもない、僕だけを見ればいい。
他の誰かを見るなんて、もう許さないからな!



言葉も身体も差し出して



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