書庫
□クリスマスの約束(染吹)
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ふぅー。
染岡は自室のベットにごろりと横になる。
もうすぐ、クリスマスイブからクリスマスへと日付が変わろうとしていた。
染岡にはもうサンタは来ないし、特にクリスマスだからとパーティーをするといった家でもないが、それでも染岡の母親はクリスマスケーキを買ってきてくれていたし、気分だけでもとそれなりの料理を作ってくれていた。そんな親が居ることが有り難い事なんだと思うようになったのはアイツに出会ったからだろう。
吹雪のヤツどうしてるかな?遠く北海道の地にいる愛しい人の事を思う。
せめて電話だけでもしてみようかと普段マメに電話やメールをする質ではないが、何となくクリスマスは人恋しい気分にさせる。吹雪が寂しい思いをしていないかが気がかりだった。
「よし!」
ガラにもないので恥ずかしい気持ちに負けそうな自分に気合いを入れると吹雪からの着信でいっぱいの着信履歴から吹雪の番号を呼び出した。
1つ、2つと呼び出しのコールが鳴ると繋がった気配はあるのにシンとしている。
あれっ?と染岡が思っていると「染岡…くん?」とやっと吹雪の戸惑った小さな声が聞こえた。
「おう!俺だ。今良いか?」
「うん…。」
「オイ!オイ!どうした?元気がねぇーな?なにかあったのか?」
「あっ…。いや…。大丈夫だよ。ちゃんと元気だよ。染岡くんこそどうしたの?」
「あー大した用事じゃないんだけどよ…。今日、クリスマスだから…お前どうしてるかと思ってよ。」照れて絞り出すように告げるとまた吹雪の通話がシンとなってしまった。
耳を澄ますとスンと鼻をすする音が聞こえた。
「えっ…オイ?吹雪?泣いてんのか?どうした?寂しいのか?」
染岡が慌てた声を出すと
「フフッ」吹雪の笑い声が聞こえたので染岡は胸をなで下ろした。
「びっくりしたり、嬉しくても涙って出るんだね。」なんて可愛いことを言う吹雪にドギマギして「おう。驚かして悪かったな。」なんてワケの分からない事を勢い込んで答えてしまう。