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□夕陽(円鬼)
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(今日もよく走ったな。)

練習も終わり鬼道が外の水飲み場で顔を洗っていると、ちょうどすぐ後に円堂が隣でバシャバシャと顔を洗い始めた。

ふーと鬼道が濡れた顔をタオルで拭い顔を上げるとまだびしょ濡れの円堂が此方をジッと見ている。

「どうかしたのか?円堂」と鬼道が言い終わらぬうちに「あー!」と円堂が素っ頓狂な声を出し此方を指差している。

「俺、鬼道がゴーグル外した所初めて見たよ!」

「そうか…。最近はあんまり人前では外すことがないからな。取り敢えず顔を拭け。」

鬼道が手渡したタオルを受け取り顔を拭いながら「へー鬼道ってそんな顔だったのか〜。」としみじみといった感じで円堂が唸っている。

「そんな顔ってどんな顔だ!」鬼道が苦笑しながら訊ねる。

「えっ?すげー格好いい!!」

「…。」

そんな素みたいに答えられても困る。

ちょっと照れている鬼道をよそに「なぁなぁ。そのゴーグル俺にも掛けさせて?」と円堂が目をキラキラさせている。そんな風にお願いされては断れない。

「あぁ別に構わないが…。」と言うと円堂は、「やったー!!」と大喜びでゴーグルに手を伸ばし掛けてみている。

「おぉ!これが天才ゲームメーカーの視界かぁ!!うっ意外と見難い…。よくこんなに視野で周りが把握できるな?」キョロキョロと色んな方向からの見方を試している。

「まあな。視野は狭まるが、深く見ることが出来る。」

「へー?よくわかんないけどすげーんだな。」と感心しながら「有難う。」と丁寧に鬼道の手にゴーグルを戻してくれた。

(そういえば、コレも影山から教わったことだったな。)

あんなに信頼し、尊敬していた人…。俺にサッカーを教えてくれた人…。

手の中に戻ったゴーグルを見つめながらしんみりした気分になり俯いているとフワリと温かく大きい手が頬を包んで上を向かせる。

「なっ!?近っ!!」

「鬼道の瞳って赤いんだな。」

円堂がかなりの至近距離でしげしげと鬼道の瞳に見入っている。

「うっまあな。」

「綺麗だな…。俺の大好きな鉄塔広場から見る夕陽みたいだ。」嬉しそうにニカッと笑う。

「お前は…よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるな?」

鬼道が呆れると、「えっ何でだ?」と円堂は何時もの調子なので鬼道はハーっとため息を吐くとゴーグルを掛け直し「知らん。」と答えてきびすを返す。

「えー待てよ鬼道!!まてって。綺麗だからまた見せてくれよな。」
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