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□やわらかい夜(円鬼)
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今日は、円堂が鬼道家に遊びに来ていた。
今や鬼道家に円堂が泊まりに来ることも珍しいことでは無く、円堂が泊まることを鬼道が執事に伝えてくれると一応鬼道の隣室のゲストルームをいつも円堂用に整えてくれているのだが円堂が使うのは浴室ぐらいで鬼道のベッドの上で話し込んではそのままそこで寝入っていまうのが常である。
今もそれぞれ入浴を済ませたが、円堂はまた鬼道の部屋に戻ってきていた。
鬼道はベッドの端に腰掛け髪をタオルで拭いている。
普段は高い位置で一つに纏められている髪が今は解かれ下ろされている。入浴後は流石にトレードマークのゴーグルも外されている。
それを円堂は広いベッドの上でゴロゴロしながら見ていた。
鬼道のこんな飾らない姿を見たことがあるのはもしかしたら自分だけかもと思うとドキドキしてくる。
ドライヤーで乾かす手元から円堂の好きな鬼道の細く白いうなじがちらちら見えるのもたまらない。
綺麗だな鬼道…。
そう思いながら見とれているといつもは隠されている赤く切れ長の瞳がチラリと円堂を見咎め振り返った。
「こら、円堂もちゃんと頭拭いておけ。」
こちらに向かいにじり寄ってきた鬼道が円堂を引っ張り起こすと向かい合いタオルで丁寧に拭き、これまた丁寧にドライヤーで乾かしてくれる。その優しい手つきがくすぐったくて気持ちいい。
「よし!」
綺麗に乾かせた事に満足しににっこり笑う鬼道の笑顔の破壊力はゴーグルをしていない分いつもの比ではなく円堂はあっという間に撃沈された。