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□クリスマスの約束(染吹)
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「うん。僕もね…染岡くんの声が聞きたくなって電話しようかなって迷ってたんだ。」
「そっか。」
「でも、家族とパーティーとかしてたら悪いかな…とか…。」
「バーカ。もう家族とパーティーなんてするほどガキじゃねぇーよ。」
「ははっ。そっか…そうだよね…。」
そう答えるとまた、吹雪が静かになってしまった。
「おい、おい。本当に大丈夫か?」
「ごめんね…。本当に大丈夫だよ。」無理やり微笑む気配がする。
やっぱり家族の事とか思い出してしまっているのだろう。何とか慰めてやりたいが北海道はすぐに飛んでいってあげられる距離ではなくこういう時子供な自分の無力さが歯痒い。
「いつかさ…。2人でクリスマスパーティーしようぜ。」こんなあてのない約束を提案するのが精一杯だ。
しかし、意外とこの提案が吹雪に響いたらしく。「本当に!」と今日初めての元気な返事が返ってきて驚いた。
「絶対だよ。一緒にクリスマスツリー飾ってさ、チキン買って、ケーキ食べようね。」
「ああ。」
「そのころにはお酒飲めるようになってるかな?そんな時、何飲むのかな?ワイン?シャンパンかな?綺麗なグラスで乾杯するんだ。」
「お前はシャンメリーで良いんじゃないか?」
「えー!?僕だってお酒飲めるようになるもん。」
コイツはこんなテレビのCMみたいなベタな事がしたいんだなと可愛く思う。あー早く大人になりたい。早くいつでもコイツの願いを叶えてやれる大人に。
「染岡くん!絶対、絶対約束だよ!」
「ああ。約束だ。」
今は、約束しか出来ないささやかなクリスマス。
終