ハピバ小説

□レム
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綿のようにふわふわとした地面が、地平線まで広がっている。



「う〜、気持ち〜」



そこに私は寝ていた。
ここがどこなのかなんて考えることもなく、うつらうつらと横になっていたのだ。



すると、目の前を羊が通る。
1匹ではない、何匹もの羊が間隔を空けて走っている。
寝ぼけたまま、私はなんとなくその羊を数えてみることにした。



「…羊が、1匹……。羊が…2匹……」



次から次へと羊はやって来る。



「…羊が…3匹……」


『……ろ』


「…羊が、4匹……」


『……ろ』


「…羊が…5匹……?」



ここでレムは異変に気づいた。
先程までの羊とは違い、今の羊は少々角張っていたように思える。



「…羊が6匹…羊が7匹〜?」



数えていくほど、目の前を通る羊達からは丸みが消えていった。



それでもまだ、レムは羊を数え続ける。



『……ろ!』


「羊が、8匹……?ひ、羊が9匹……羊が……」



だが次の羊を数えようとした瞬間、その羊は足を止めた。



「?」



その羊には丸みはない。
体はかくかくとしていて、羊独特のふわふわ感は全くなくなっていた。



この感じ、どこかで見たことあるような……。



『おい、レム!』



しかし、考える間もなく次の瞬間、羊は牙を向けて襲いかかってきた。



『いい加減起き…「ひゃああぁああぁあぁああぁあ!!?」』



ゴツンッ、と大きな音が響く。
衝撃を受けて、レムの脳は瞬時に覚醒した。



「ハッ、夢!?」


「おまっ、何しやがる……!?」


「へ?」



夢から覚めたレムが声のした方を向くと、額を押さえたランバダが視界に入る。
この衝撃はランバダとぶつかったものだと、レムはようやく理解した。



「ランバダ様!おはようございます!」


「まず最初に謝れ……!」


「すみませんっ!」



レムはすぐにお辞儀をする。
ランバダの額にはこぶができていた。



「夢の中で羊を数えていたら…突然1匹の羊が襲ってきたものですから……!」


「寝ている間に羊を数える奴なんて聞いたことがないんだが」


「でも今わかりました!最後の羊は羊じゃなかったんです!ポリゴンだったんです!!」


「よーし、もう2度と起きてくるな」



何ともワケのわからないことばかりを連発する部下に、思わずランバダから溜め息が出る。



「…そういえば、何でランバダ様がここに?」



レムの問いに、ようやくか、とでも言うような表情をしてランバダは答える。



「今日は隊長会議だ。さっさと来い」



その言葉にレムは唖然とした。
今まで起こしに来たことなどなかったと言うのに、これは一体何事か。



一向に状況を飲み込まないレムに、ランバダは背を向けてボリボリと頭を掻く。



「…自分の誕生日ぐらい、遅れたくないだろ」



ボソッと呟かれた言葉にレムは驚いた。
誕生日、そのためだけに自分の所へ来てくれたことがとても嬉しかった。



「…お返しされちゃいましたね」


「?」


「ランバダ様の誕生日の」


「……フン」




その日の隊長会議は、誰1人として遅刻した者はいなかった。




「…ハッ、書類忘れた!」


(ダメだこりゃ……)







→あとがき
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