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□ヴァンツの物語
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…戦いを恐れたことはない。
例え相手が凶暴な飛竜や、あるいは人間であろうとも。
死を恐れたこともない。
例えそれが明日、あるいは今日限りの命であろうとも。
…唯一、俺が恐れたこと。
それは、俺が俺で無くなること…。
かけがえのない仲間を失うこと…。
繁殖期・温暖期・寒冷期、そして昼夜問わず、多くの人で賑わう街…ドンドルマ。
その中央に位置する大老殿の地下…そこにはギルドを守護する戦闘のエキスパート集団、ギルドナイトと呼ばれる組織の施設がある。
ギルドナイトの中でも、特に優れた実力を持つエリート集団:12ナイツ(トゥウェルヴナイツ)という栄誉を授かれるのはたったの12人。
その条件は、心・技・体のいずれかに特に秀でている者であり、モンスター・対人戦共に優れた実績が無ければいけないというものだ。
現在、12ナイツとして任命されているの者は9人しかいない。
…だが数年前までは12人いた。
この俺も含めて。
あの日…あの惨劇の日々、俺は俺で無くなった。
……2人の12ナイツが死に、1人は除隊処分になったあの惨劇の日々は、後に「ザ・マッサカー(殺戮の日々)」と呼ばれ、今でも話題になることがある。
その話題のために俺…ヴァンツは…。
あの日除隊処分になった12ナイツのヴァンツ=デュスカルクは…誰からも恐れられ、ろくな宿も見つけられずに今日まで生きてきた。
過去を語るのは好きじゃないが……特別に話してやる。
なぜ俺がこんな様になってしまったのかを…。