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□ヴァンツの物語
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「ふぅむ………なんと強い波動じゃ…。
しかし悪とも善とも取れぬ。」
例の箱を凝視しながら、大長老は頭を抱えていた。
「やはり箱を開けるのは危険でしょうか…?」
少し気落ちした表情で、バージルが大長老に聞く。
「うぅむ……おぬしら3人がいれば、何が起こったとしても心配はいらぬじゃろうが……念のため、12ナイツ全員をここに集めてくれまいか。
今までに感じたことのない波動じゃ…万全を期す必要があるじゃろうて。」
常に大長老の傍にいる大臣が、ガーディアンに命じて俺達以外の12ナイツの召集に向かった。
「…大長老、箱の中身は一体何だと思われますか?」
おそらく皆が疑問に思っている事を単刀直入に聞いてみた。
「ふむ…中身とな…。…箱の形状からして、恐らく剣か…あるいは矛か…。」
どちらにしろ、こんな波動を放つ武器が存在するのだろうか。
正直、かなり興味をそそられる。
「ちょっとヴァンツ…あなたもしかして、大長老のお許しさえ頂ければ箱の中身を自分の物にしよう…とか考えてないでしょうね?」
俺の心を読んだのか、エルメリアが小声で囁いてきた。
「ばか、そんなワケあるか。あんな物、到底俺なんかの手には負えないよ。」
「そう…それもそうね。ならいいんだけど…。」
まだ心配そうな表情でエルメリアは俺の目を見ている。
「大丈夫だ…心配するな。もし何かあったとしても、お前だけは命に替えて守ってみせる。」
安心させようと、エルメリアにそう囁きながら微笑みかけた。
箱の中身がどんなに優れた武器であろうが…エルメリアを危険に晒すわけにはいかない。
同時にさっきまでの好奇心は薄れていった。