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□『知る者と知らざる者』
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酒場で騒いでいたハンター達のうち何人かが振り返ったが、何事もなかったかのようにまた話し始めた。
相変わらずカウンターに腰掛けているギルドマスターを見つけ、エルメリアと共に歩み寄る。
「昨日はよく眠れたかの?」
俺達が挨拶をしようとするのを遮り、ギルドマスターが聞いてきた。
「ええ、おかげさまで。」
そう言いながら頭を下げる。
泊まる所もなかった俺達に、とりあえず今日のところは…といって高ランクハンターの為の部屋をあてがってくれたのはギルドマスターだった。
最高級の生地を使用したベッドのおかげで、昨日は色々なことが起きたにも関わらず熟睡することができた。
「ホッホ、それはよかったわい。
あの部屋はこれからも自由に使うがよい。
宿の主人にはもう話をつけてあるからの」
例外的な優遇だ。
通常、正式にハンターとなった者は例外なくハンターランク1から始まり、ランクの上昇に応じて宿泊できる部屋のランクも上がっていく。
下からポーン、ビショップ、ルーク、クイーン、キングと格付けされた部屋は、そのハンターに招かれる客にとっても重要な評価点であるのだ。
ドンドルマにいた頃、友人の付き合いで何度かハンターの宿泊する部屋に招かれたことはあったが、せいぜいビショップかルーク。
あってもクイーン止まりだった。
クイーンのルームに招かれたときには、その豪華絢爛たる内装に目を見張ったものだ。
横に広く、大きく空けられた壁穴から眺める景色も素晴らしく、その時こそハンターという職業を羨ましく思ったのを覚えている。
何千人というハンターで賑わったドンドルマでさえ、クイーンを超えるキングのルームに宿泊できる資格を持つハンターは片手で数えられるほどだった。
そこで、昨日俺達にあてがわれた部屋のランクが『クイーン』だと聞いた。
街に着いたのが昼間だった上、色々と騒動もあった。
正式にハンターとして登録されたのは、よくて昨日の夕方あたりだろう。
それにも関わらず、この待遇。
いくら俺達がドンドルマのNo.1とNo.3のギルドナイトだったからといって、この待遇は考えられない。
…何か裏がある。
俺はそう確信した。