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□第四章『狩人達の鎮魂歌』編
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「気は進まないが…おい道化師!!!お前も手を貸せ!!」






そう言ったエースは険しい表情で唇を噛み締める
あのエースがリノールの手を借りようとする程の状況………





クルセイダーの実力は余程なのだろう






だが当のクルセイダー団長は『道化師』と呼ばれた男の姿に目を見開き驚愕の顔を浮かべていた





つられて振り返ると、リノールは馬車に寄り掛かり頭を軽く上下に揺らしている






「お、お前はリノール!!?」






辺りに響き渡る程の大声を上げ、クルセイダー団長はリノールを指差した








もちろん寝ているリノールがこれくらいの声で起きる訳もない






そして訪れるしばしの沈黙






彼はリノールを指差したまま痛い空気を実感しているかの様に額に冷汗を流していた





「ちょっとガータ……本気で王子とやり合うワケ?」





その痛い空気をごまかすかの様に慌てて団長に声をかける女のクルセイダー





ガータ…………そう呼ばれたクルセイダー団長は握った拳を口元に添え、軽く咳ばらいをする





「ゴ、ゴホン……馬鹿を言うなメリッサ!本気でなければとっくに王子達を通している!」




少し気まずい表情だったガータだが、急に雰囲気が変わり右手をゆっくり剣の柄に添えた






「…力付くでも連れ戻せとのご命令だ…!」







茶色の短髪に釣り上がった彫りの深い目元






耳元から多少の髭が生えた顎に伸びる傷痕






素人ならこのガータの見かけと殺気だけで膝に力が入らなくなっていただろう






俺は手の平に流れる汗を感じながら身構え、チラリとエースを見た





多少強張ったその横顔が俺の不安をさらに掻き立てる






クルセイダー団長のガータと女クルセイダーのメリッサ





2対2だが相手は対人戦の本職だ






正直勝てる見込みは見いだせない






腰から剣と呼ぶには大きめの物を抜くガータと、これまた大型な双剣に手をかけるメリッサ






この二人がリオレウスとリオレイアならどれほど楽だったろうか…………






いや、今はそんな事を考えてる暇はない





深く深呼吸をし、背中の深青の太刀の柄に手を伸ばした






だがその時、俺の横でエースを片手で制しヴァンツとエルメリアが前に出る





少し強い風が吹き草木が揺れ動く中、片手で押さえている羽帽子で表情が見えないヴァンツが口を開く









「エース、ここは俺とエルメリアに任せろ」
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