怨猫に九生あり
□世界へ対する不倶戴天
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*世界へ対する不倶戴天*
彼女は今日と言う日だけで…どれだけの場所に訪れただろうか
沢山の場所に姿を現した怨み屋は、次なる場所へ訪れようとしている
其処は猿飛あやめの愛する人物が居る場所で彼女は溜め息を吐いた。
『(あやめの愛する坂田銀時ー…己の信念を貫き通す男ですか、この腐った世界には珍しい人間。)』
でも僕はそんな人間に興味などありません
『(どうせこの世界は、滅びなくなってしまうのですから。)』
偽った長い髪の毛を揺らしながら歩く少女は…まるで生きる人形の如く、冷たく凍て付いた氷の瞳はただただ前だけを映していた。
しかし歩いていては仕事開始時間が遅くなる
それはまずいと判断した怨み屋はスッと一度しゃがんだと思ったら、何時の間にかに宙を舞っていて…音も立てずに店の屋根へと着地した。
そして建物から建物へと飛び乗っていく
多大なスケジュールのためか早く移動出来る様にと猿飛から教わったもの、それがこの身体能力で周りの者は密かに驚く
『(盗撮…いえ写真は3分程で片付けなくては午後3時に間に合わない、何故僕は3時から……と申したのですか。自分の発言に後悔をおぼえますよ)』
少量の向かい風を全身で受けながらも目的地を目指せば、すぐさま着いてしまうわけで
坂田銀時が住む家の屋根に着地し…中心に設置されたアンテナを弄っていると、お目当ての人物が1階の店から出てきた。
「桜ちゃーん、来ると思ったよ。…てか何で下にズボンを穿いてんだ、銀さんの楽しみが減るだろうが」
『(あの人の言葉は聞かなかった事にして僕の気配を感じ取るとは…流石です。)』
下りて来てほしいのか両腕を広げている彼を横目に、怨み屋は無視を極め込む
実は今の会話でも分かるように2人は他人以上の関係……否
以前に同じく盗撮していた彼女が偶然にも見付かってしまい、知り合いとなってしまったのだ
ついでに怨み屋はこの男に対し左右(あてら)桜と名乗っていて趣味は写真を撮る事など嘘を吐いている
「まぁいい…、ンでまた撮ってくれんだろ?俺をそのカメラで。」
『はい、今日も宜しくお願いします……。』
そう言いながら地面に足を付ければ銀時に目を見つめられ疑問を抱いた。
少しずつ少しずつ近付いてくる彼に更なる疑問が溢れているとグググッと、距離を縮められる
『な、何ですか坂田さん。』
「いやー…何つうか、おまえ何時も悲しそうな顔してるって言えばいいの?何かを怨んでるかの様な目ェしてるからさ、どうしたのかなーって。」
あっ…彼氏にフラれたんだろ、と訊いてくる銀時に違いますの一言
この会話で怨み屋は軽いデジャヴを感じたのは言うまでもない、その後2人は彼の家へと上がり玄関にて会話を続行させる
『……今日、ある女性の方にも怨恨のオーラがあると言われました。』
「だろ?やっぱおまえ誰かを無意識に怨んでる。」
『………。』
偽りのない真っ直ぐな目は心を見透かされている様な感覚となり、怨み屋は咄嗟に目を逸らした。
だが彼女は無意識とばかりにこんな例え話をする
『もしも…貴方には凄く大切な人が居ました、』
凄く凄く大切な人……なのにその人は、ある人達から玩具の様に扱われて
『それでこの世界に絶望した大切な人は、恐ろしい程の怨みを抱いて死を選んだのです。』
自分はただ死んでいく姿を見ている事しか出来ない、そんな自分に新たな怨みが込み上げてきませんか?
『大切な人を奪ったこの世界を……貴方は許せますか??』