特殊夢小説置場

□スノードロップ
1ページ/1ページ



※もしも志村新八が最年少アンデッドだったら
※志村新八中心(不老長寿/お正月設定)



もう何度目の新年を迎えたのだろうか、病院の個室にて少女は思う


少女…と言っても不老長寿なため普通の人間よりは何倍も年を重ねていた。

牡丹雪が降るのを何処か虚ろな目をして眺めていると……病室の扉がコンコンッとノックされる


ゆっくりとした動作でベッドから起き上がった少女

小さく口を開けて「どうぞ」と喋れば、部屋へと招かれる少年が1人


『こんにちは…じゃなかった、明けましておめでとうございます。』

「そんなのはどうだっていいんですよ、どうして横になっていないんですか?また具合を悪くしますよ??」

『新八さんは相変わらずですね。』


たいして年の変わらぬ少年…志村新八は寒々しい姿をした少女に軽く呆れていた、骨粗鬆症で入院した彼女が風邪をこじらせ悪化でもしたら…そう思うと心配で堪らなくなる


『昔から全然変わってない、この世はだいぶ変わったと言うのに…貴方は変わらずに居てくれる。』

「………。」

『汝はわたくしを怨んでいますか?自分と同じ"不老長寿"にしてしまった、このわたくしを。』


少女は罪悪感からか少しだけ顔を伏せた。

少女だって、好きで彼を不老にした訳じゃない

ちゃんとした理由があるのだが、今でも新八には伝えられないでいた。


「…怨んでいませんよ、僕は貴方を受け入れてますから。」

『嘘が通じるとでも思っているんですか?……では問いましょう、その花は何です??』


彼が後ろで持っている白くて小さな花

待雪草なんて和名の花は春を告げるものとしては酷く有名だ、それを見た少女はとくに表情を変える事もなく口をこれまた小さく開ける


『スノードロップ、ヒガンバナ科の植物ですね。』

「………、」

『花言葉は希望や慰め、ですが人にあげる場合は裏花言葉たるものに変化しましてね。意味が変わってくるんですよ』


備え付けられたテレビの電源を入れて、軽く微笑んだ

まるで全てはお見通しとでも言わんばかりに


『裏花言葉の方はあえて口には出しませんけど…貴方の本心は受け取りましたよ新八さん。』

「こ、これは違うんですっ……!」

『別にいいんですよ、人から殺意を抱かれるなど…とっくの昔に慣れた事です。』


両手首にギプスを付け2リットルのペットボトルを持った彼女

コップに水を入れつつも口はしっかりと動いていて、少年の耳に無理矢理声を送り付ける


『……それよりも新八さん、雪兎を作ってきて下さい。』

「えっ?」

『生憎此処には兎の置き物がないから、新年を迎え卯年になった実感が湧かないのです。』

「いやっ…ですけど、」

『命令、とでも言えば宜しいのでしょうか。』


刹那スッと目を細める少女


もちろん彼女の命令には逆らう事など出来ず新八は一礼すると部屋から立ち去って

身体の弱った少女がポツリと1人…否、独りだけとなってしまった。


『貴方が我を嫌うのと同じで…わたくしも新八さんが大嫌いなのです、だからこそ伝えてあげない。貴方を不老長寿にした理由って言うのがお姉さんの望みであった事も全部全部、』


コップの水を一気に飲み干した少女は鍵の掛かった引き出しを開け、1枚の手紙を取り出す

かなり古びてしまったソレであるが、封は切られていなかった。

そんな古びた手紙を見やり小さく笑ったのは直後の事、だが口元に笑みを浮かべても濁りきった瞳が笑う事は絶対に皆無なのでした。


~Snowdrop~
(表の花言葉は希望や慰め、だけど…裏の花言葉は"あなたの死を望みます"。)


汝が死を望むなら……妾は汝の絶望を望みます

"何故かって?"

クスクスッ…愚問ですねェ、君のお姉さんは悪くなかったけれど君自身の事は大嫌いだったからですよ


(雪の如く真っ白な心は、)
(侍の魂を持つ人間達と共に…成仏されてしまいました。)



2010,12,22
企画サイト 「蟻の大群。」 様へ提出
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ