WHITE ROOM
□初恋発生理由、そして、条件
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鈍痛を訴える体を無視し、ここはどこだと目を開く。
そこには見慣れた、しかし有り得ない光景が広がっていた。
ユーリは飛び起きると隣で倒れているフレンを揺さぶる。
とりあえず一人でどうこう出来る問題ではなさそうだしなによりもフレンの無事を確認するのが先決だ。
「ユー…リィ?」
どうやら軽く頭を打ったらしく目の焦点が合っていないがこの程度なら問題無いだろう。
ぼんやりとしたままのフレンを抱き起こすとゆっくりと頭を撫でてやった。
「な…え?、…え?」
目の焦点が合ってきたフレンが戸惑いの声を上げる。
だが戸惑うのも無理ないだろう。
「ここは…昔僕たちが住んでいた…部屋?」
忘れもしない。
8歳の頃ハンクス夫妻が誰も使っていない小さな家を自分達にくれたのだ。
しかし今はもう無いはずだ。『今』は。
自分達が15の時にきた大嵐によって人が住めるような状態ではなくなってしまったために取り壊され、更地になった後は貴族の家庭菜園に使われている。
だが、今目の前にあるのだ。なくなったはずの自分達が住んでいた家が。
「時の精霊…攻撃術式じゃない…」
「…まさか、な?」
ユーリが半信半疑で近くにあった日めくりカレンダーを覗き見た。
「おいおい…冗談きついぜ」
カレンダーの日付は今日をさしていた。ご丁寧に自分達がいた西暦から14年前の今日を。
タイム・トラベル
そうと解れば話は早い。
二人は無言のまま目だけで会話をすると勢い良く窓から飛び出した。
いくら混乱しきった頭でもわかる。
この時代の自分達と会うのはまずい。非常に、まずい。
もしかしたらこれは夢なのかもしれないと思ったが術者はリタだ。
彼女が失敗すると思えない。それに感覚は嫌にはっきりしているし、夢だと思うことはものの数秒で終わりを告げた。
「本で読んだことはあったけど…そんな…本当に…」
思い切り全力疾走したために肩で息をするフレンが苦しそうに言う。
とりあえず人が滅多に通らない裏路地まで来たはいいがユーリの格好はともかくフレンの格好は目立ちすぎる。
どうしようかと考えていたユーリは突然イタズラを思いついた少年のような顔になった。
それを見たフレンはさっと血の気が引くのを感じた。
昔からユーリがこういう表情をした時、自分とって絶対に
「フレンは女装だな」
ろくなことは起きないのだ。