BLACK ROOM

□Oath kiss
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「なぁ」

「好きだぜ」

薄暗い部屋に自分の低い声が響く。
その声を受けたこの薄暗い部屋でもきらきらと輝く金を携えた男がスカイブルーの瞳
を愛おしそうに細めて「僕もだよ」と言った。

「この世の何よりも君を愛している」

まるでガラス細工でも扱うかのように男は俺に触れる。
小鳥が餌を啄むような優しいキスが顔中に降り注いでくすぐったさに俺は目を閉
じ、仕返しのように男の唇を奪ってやった。

「どうしたの、今日は積極的だね」

「まぁな」

今度は真っ黒な俺の髪を男は撫でつける。

「切ろうと思うんだ」
「そう…」
「もう必要ないからな」
「切った髪の毛少しもらってもいいかな」
「おいおい。いつから黒魔術に興味がおありで?」
「ははっそんなんじゃないよ」
「はっじゃなきゃこっちが困るっつーの」


ひとしきり笑い合った後に

「ユーリ」

男が俺を呼んだ。


その広い胸に掻き抱かれ俺はふっと息を吐く。そしてこの部屋に足を踏み入れた
時からいつ言おうか迷っていた言葉を口にした。




「結婚おめでとう、フレン」




幸せになれよ、とはなぜか喉が詰まって言うことは叶わなかった。



end




(いつか現れる相応しいやつの変わり、代理だと自分で言ったのに)

(このまま君を連れて逃げてしまいたい)









後書という名の言い訳

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