WHITE ROOM

□初恋発生理由、そして、条件
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鈍痛を訴える体を無視し、ここはどこだと目を開く。
そこには見慣れた、しかし有り得ない光景が広がっていた。





-初恋発生理由、そして、条件。-





『時間を司る精霊を発見し、その精霊を駆使した術式開発に成功した。至急ハル
ルまでフレンとユーリに来て欲しい』


リタから唐突に来た簡素な文書をフレンが読み上げると窓枠に座っていたユーリが
不機嫌そうな顔を隠そうともしないで「行きたくねー」とらしくない駄々をこねた。


「どうして?時の精霊だなんてすごいじゃないか」
「お前なぁ、リタだぞ?あのリタ・モルディオが呼んでるんだぞ?その術式を俺
達に使いたいだけだ。絶対そうだ。」
「でも僕たちがいかなかったら他の人がその術式の実験体になるの?」
「……………」
「…ユーリ…」
「っていうか俺が行きたくないっていう理由それだけじゃないって…わかるよな?」
「え、あ…うん。」


フレンは顔を真っ赤にすると自分のつま先を見詰めた。

ユーリの瞳は自分の思っていることを何でもわかってしまいそうで、時々すごく恐い。

フレンはここ半年ほどずっと休み無く働いていた。しかし今日からなんと三日間
も休みなのだ。

部下達から再三休むように言われていたがそれらをやんわりと受け流し続けていると
見かねたヨーデルから

『騎士団長は三日間の休息をとるように』

という勅命が出てしまった。さすがのフレンもこれには逆らえない。

しかしどこまでも真面目なフレンは休養も大事な仕事だ、と折角の三日間を睡眠をとり続けて終わるのではないかと少しズレた心配をしたヨーデルによってユーリがフ
レンの元へ召喚されたのだ。


普段落ち着いているユーリだがこの話にはかなりテンションが上がったようですぐにフレンの私室へと足を向けた。

それもそのはず、恋人であるはずのフレンとは愛を確かめる行為はおろか2ヶ月
も顔を合わせていなかったのだから。


ユーリは限界だった。
何がだと問われれば率直に言おう。性欲が、と。


窓から私室へと侵入するとまず一番に夜の約束を取り付けた。
フレンは顔を見事なまでの林檎色に染めながらも首を縦に振ったのだ。
ユーリのテンションはまさにうなぎ登りだった。


そして今に至る。


ユーリのうなぎ登りだったテンションは下がり、意気揚々と滝を登っていたうなぎは今や干からびている。

「ユーリとの…その、あの…やくそくはちゃんと守るよ?だから…」

…お願い?とフレンに可愛らしく懇願されて断れる野郎がいるならぜひとも顔を拝んで見たいと心から強く思ったユーリだったが、
「わぁったよ」
結局は溜息をつきつつもハルル行きを了承した。
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