ANOTHER ROOM
□花が咲く頃、あなたを攫っていいですか。
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「次の依頼はハルルだけど…大丈夫?」
エステリーゼへの返事をしないまま二週間が過ぎた。
相変わらずフェイルティア号で寝泊まりをしているリタは宿代と称し、凜々の明星の仕事を手伝っている。
次の依頼先がハルルということは自分もそこに行かなくてはならない、ということだ。
「…大丈夫よ」
「全然大丈夫に見えないのだけれど?」
「うん」
「あぁ」
ジュディスを筆頭に皆リタの強がりを突っぱねると彼女の眉間に皺がよる。
「もう、返事は決まってるの」
眉間の皺は相変わらずだったがそう小さく呟いたのがジュディスの耳に届くと彼女は優しく笑い、バウルにハルルへ行くと告げた。
バウルは返事のように一声吼えると旋回しハルルへと進路をとる。
もうすぐ、ハルルの花が満開になりそうであった。
「リタ!なんだか久しぶりに感じます!」
「エステル…」
ハルルに着けば真っ先にエステルが出迎えをしてくれた。
二週間前となんら変わり無い様子で。
まるであの言葉など初めから無かったかのような振る舞いにリタの心は締め付けられる。
エステルのあの言葉に他意は無いのだと、自分が一番解っているはずなのに暖かい場所に慣れすぎた今の自分では都合の良い考えが、浮かんでは消えてゆく。
だから決めたのだ。
自分のこの気持ちを伝えると。
「エステル。話があるの」
「リタ…」
「ついてきて」
エステルが頷くのを確認するとその手をとり、ハルルの木の下へと歩き出した。
その様子を仲間達が生暖かく見守っているのにも気付かずに。