Short

□言えず言えず





「謙也ぁ」


声にだして呼んでみる

ただ意味もなく


「…俺謙也やないで」



周りに人はいないと思っていたのだが
部長こと白石の声が後ろから聞こえた


「……知っとるわぁ」


振り向かず応える

白石が二年の時
部長に指名したのは俺だった
強いし努力もしていた

なにより…白石は謙也の隣にいた

きっとこれからも隣にいるのだとふんでいた


普段はちゃらけているがやっぱり本命には手がだせない

ヘタレと言われても別にいい


「部活始めよ思って呼びぃ来たんやけど」



「…………ほな、やろか!」

「や、今日はオサムちゃん来んでもえぇで」

立ち上がった途端に制される
いったいどっちなんだ


「テンション低いオサムちゃんが来てもウザいっちゅうねん」


そういうとコートの方へ歩いて行った

吹かしていた煙草をもう一度だけ口に運び、火を消す

とりあえず部長に来るなと言われたようなものなので
パチンコにでも行こうかと思う

先程よりも重くなった身体で立ち上がり、校門へ向かって歩きだした



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