捧げ物

□嘘
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「すまんかった」

掴んでいた手首を離し、喜助の涙を指先で拭う。
その時だった。
背後で微かに笑い声が聞こえた。
霊圧を探り、誰かは判明した。

「お前、夜一!」

「ばれたかのう。しかし喜助、あいかわずナイスな演技じゃ」

驚く平子をよそに喜助もまた喉の奥で含み笑った。
二重の嘘に引っかけられたことにようやく気づいた平子は憤慨した。

「今日は四月一日ですよ。平子さん」

「……洒落にならん嘘はつくなや」

「すみません」

へらへらと笑う喜助に怒気を削がれ、平子は溜め息を吐いたが、直ぐにニヤリと口の端を持ち上げた。

「ちぃと仕置きが必要やな」

「どうぞ、やってみて下さい」

「あー、気分だしておるとこすまんが、どうするつもりじゃ、これ」

夜一は倉庫の中を指差した。
辺りはものが散乱し足の踏み場が殆どなく、我に返った平子は焦った。

「やってもうた!」

立ち上がり部屋の片付けをする平子を背に、喜助は逃走を謀った。
しかし、がっしりと後から肩を掴まれ、逃げることが出来ない。
夜一に助けを求めようとした喜助だったが、振り向いた先には誰も居なかった。
やむを得ず、片付けを手伝う。
倉庫の中は以前よりも綺麗に整えられ、見違えるほどだった。

「それじゃあ、僕はこれで」

喜助は急ぎ踵を返そうとした。
しかしそれよりも早く平子は喜助の退路を絶った。
瞬間、喜助は血の気を無くした。

「お仕置きや!!」

「ヒーー!すみません!許して下さい!!イヤーー!!」

かくして、二人は他の仮面の軍勢達が帰ってくるまでずっと一緒に居たのであった。
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